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神戸大学法学部 2004年度前期

アンケート

2004.07.02. 実施  無記名  回答数27


講義を終えて 感想と反省


アンケート用紙(PDF) 学部共通フォーマット

質問項目

C  この授業へのあなたの出席状況を以下の選択肢から選んで下さい。
  1 100%  2 80-99%  3 60-79%  4 40-59%  5 40%未満

  平均値 4.38

 

D この授業のためにした予習・復習等の勉強の程度について、以下の選択肢から選んで下さい。
  1 十分した  2 まあまあした  3 どちらでもない  4 あまりしなかった  5 しなかった

  平均値 3.79

 

以下では、各問について、あなたの考えに最も近いものを次の五つの中から一つ答えて下さい。
     1.とてもそう思う
     2.ややそう思う
     3.どちらともいえない
     4.あまりそう思わない
     5.全くそう思わない

E  教員の話し方は、聞き取りやすかった。
   平均値 4.03

 

F  教員の話し方は、ノートがとりやすかった。
   平均値 3.17

 

G  指定された教科書は授業の理解に役立った。
   平均値 3.61

 

H  配布されたレジュメ等は授業の理解に役立った。
   平均値 4.07

 

I  黒板、OHP、ビデオ等の使い方は適切だった。
   平均値 4.28

 

J  一回あたりの授業の進度もしくは分量は適切だった。
   平均値 3.48

 

K  授業はシラバスに沿って行われた。
   平均値 4.45

 

L  教員は、受講生の理解度を正しく把握していた。
   平均値 3.41

 

M  教員は、学生の質問に丁寧に対応していた。
   平均値 4.10

 

N  この授業は休講が少なかった。
   平均値 4.76

 

O  理解を深める工夫がなされていたと思った。
   平均値 4.31

 

P  教える側の意欲が感じられた。
   平均値 4.62

 

Q  授業の内容はわかりやすかった。
   平均値 4.00

 

R  授業内容は知的興味を引くものだった。
   平均値 4.52

 

S  この授業を受講して、新しい知識や物事の見方が得られた。
   平均値 4.48

 

T  他の学生にこの授業を履修することを勧めたい。
   平均値 3.97

自由記述

 内容別に整理しました。なお、講義についての意見ではないものは掲載していません。

 

講義を終えて

 今回の講義は、2点においてこれまでと異なっていました。まず、学部カリキュラムの全面改訂に伴って、これまで4単位科目であった国際法概論が2単位となりました。さらに、初めて、英語の教科書を用いました。

 講義を終えてみるといろいろ反省すべきことがありますが、2単位になったことから生じた問題と、英語の教科書を用いたことから生じた問題との区別がなかなかに難しいところです。

講義・予習への課題配分

 授業評価アンケートにも現れているように、2単位にしては内容が重すぎるとの感想が少なくなかったようです。たしかに、これまで4単位でなされていた内容を半分の講義時間でこなしたわけですし、教科書が英語だったこともあって、予復習は大変だったでしょう。しかし、いつも言うことですが、世界標準からすると、この程度の分量を2単位(=講義時間30時間)でこなすのは、例外でも何でもありません。第一回アンケートへのコメントでも述べた通り、これでも少ないぐらいなのです。むしろ、この内容を昨年度まで4単位でやっていたことの方が、世界標準からすれば、例外だったと言えます。

 同じ内容を半分の講義時間でこなすとすると、当然、講義で取り扱うことのできる分量は半分になります。それだけ、予復習に委ねる部分と講義で取り扱う部分との切り分けが重要になります。その作業は慎重にやったつもりですが、振り返ってみるとまだまだ改善の余地がありそうです。

 今回は、予習課題を非常に詳細に明示する一方で、講義で取り扱う問題は事前に伝えないようにしました。それは、それを教えてしまうとそこしか勉強しないのではないか、との配慮(疑心)によるものでした。ですが、講義中の議論をより活発なものにするためには、事前に伝えておく方が良かったかと今では考えています。

 それとも関連して、講義で取り扱わない様々な問題をどのようにカヴァーするかが問題になります。詳細な予習課題を与えたので、それをこなせば十分ではあるのですが、一人で勉強していると「自分は理解しているのかどうか」ということがなかなか判定できません。

 そこで、数人の仲間で勉強会を頻繁に開くことを何度か勧めました。これが極めて効果的な学習法である(講義よりもよほど勉強になる)ことは定評のあるところですが、神戸大学ではなかなか実践されていないようです。下宿生が比較的少ないために時間的制約が大きいからでしょうか。

 次善の策として、Web掲示板を利用した議論を考えました。Web掲示板利用の成功例はいくつか知っているのですが、今回に限っては、悪くはないが成功とは言えない、という結果にとどまってしまいました。当初は「質問があったら書き込みなさい」と伝え、かつ、毎回の授業後に回収する「授業振り返りメモ」に書かれた質問とそれへの回答を私が書き込んでいました。が、なかなか書き込む学生が出てこないので、過去の講義で用いた例題を掲載してみました。ところが、これがちょっと難しすぎた(予復習で手一杯の受講生には時間的に対応できない内容だった)ようで、反応があまりありませんでした。

 今後は、講義で取り扱わない部分については、本格的な例題ではなく簡単なクイズのような小テストを課した方がいいのだろうかとも考えています(その場合、成績が優秀であれば加点することにして)

英語の教科書

 英語の教科書を用いた理由は、講義要綱に記した通りです。英語教科書を用いたことでどのような効果があったか、判断は難しいところです。

 Casseseの教科書を採用したのは、
  ・比較的平易な英語である
  ・全体を貫く視点が明確である
  ・あまり細かいことを書いていない
といった理由からです。実は、フランス語やドイツ語だともう少し「国際法概論」に適切な教科書があるのですが、さすがにそれを使うわけにはいきません。

 ただ、実際には日本語の教科書を読んでからCasseseを読む、という学生がむしろ多かったようです。そうであれば、教科書・判例集は日本語にして、大量の英語資料を配付する、というやり方の方がいいのかもしれません。

 また、英語の教科書を用いることで一つ大きな副作用が出ました。受講生の大幅減少です。試験のページに書いているように、受験者数は28名でした。ちなみに、登録者数は39名です。前回私が担当した2002年度の国際法概論では、登録者数179名、受験者数78名でしたので、激減と言っていいでしょう。

 受講生が少ないのは私の講義に問題があるからでしょうが、2002年度にも既に私の講義については学生の間で一定の評価が出来ていましたので、今年度これだけ減ったのは英語の教科書を敬遠したからだと考えられます。

 もしそうだとすると、非常に大きな問題です。「仕事に使える水準」で英語を使いこなすことは、もはや職業生活上最低限の要請です。しかも、「英語ができるようになりたい」と思っている学生は、神戸大学法学部生の圧倒的多数でしょう。にもかかわらず、英語の教科書を敬遠するというのは、重い現実です。1回生の時点から英語力を鍛え上げ、少なくとも2回生になったら英語の教科書に抵抗感を覚えなくてすむようにしなければなりません。

対話式講義

 私の講義は、ほぼ全て対話形式で進んでいきます(その点からみれば、受講生が少ないのは好都合でした)。一般論として、教員がひたすら話し続ける一方通行型の講義は、既に歴史的使命を終えたと考えているからです(いろいろな分野の研究者がいろいろな視点からそのことを指摘しています。例えば、苅谷剛彦『変わるニッポンの大学』(玉川大学出版部、1998年)を参照してください)。何も、「双方向型・多方向型」の講義が求められるのは、法科大学院に限った話ではありません。

 対話式講義を成り立たせるためには、上に述べた「講義で扱う内容と予復習に委ねる内容との切り分け」など、さまざまな配慮が必要になります。しかし、今回感じたのは、ハードウェアの問題でした。つまり、163教室の構造です。あの教室は、どう考えても対話式講義には不適な構造になっています。あのような固定机の配置では、いかに私が教室中走り回ったとしても、対話を成り立たせるのは困難でした。昨年度後期の夜間主国際法では、アカデミア502で可動机を並べ替えて講義をしましたので、非常に対話のしやすい環境だったのですが、今回はその正反対でした。全くもって愚かなことに、教室を変更する可能性があることに思い至ったのが6月中旬になってからで、手遅れになってしまいました。大きな反省材料です(163教室を改造したい、とも個人的には思いますが)

                        

 いろいろと反省することの多かった今回の講義ですが、それでも熱心に受講してしっかりした答案を書いてくれた学生が少なくないことには、大変うれしく思います。来年度以降の国際機構法や国際紛争と法の講義で再び会えることを楽しみにしています。