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神戸大学法学部 2004年度前期

国際法概論

第1回課題

2004.03.25.


 第1回講義は4月9日(金)に行う。

 講義概要にも記したように、本講義ではCasseseの教科書を読み解くための手がかりとして詳細な予習ガイドを配布する。初回講義で扱うのは、"Preface"(pp. iii-iv), "1. The Main Legal Features of the International Community"(pp. 3-18), "2. The Historical Evolution of the International Community"(pp. 19-45)である。この範囲について、以下の点に気をつけながら予習されたい。

 ただし、初回講義であり、予習に十分な時間を確保することが必ずしも容易でないことは理解できるので、"2. The Historical Evolution..."まで予習してくることは前提とせずに講義する。


一般的注意
Casseseの教科書は、Companion Websiteと一体となっている。教科書に出てくる条約等がPDFで入手できるほか、関連リンク集もあるので、必ず毎回参照すること。なお、同サイトに掲載されている参考文献リストは、印刷して初回講義にて配布する。
 
なお、この教科書の読み方について、Prefaceのpp. iii-ivにまたがる段落に記された筆者の配慮を十分に理解しておくこと。

今回の範囲全体に関わる問題
"the tension between traditional law... and the new or nascent law..." (p. iii) とはどういうことか。
 この講義全体に関わる問題なので、常にこの点を念頭に置いて本書を読み進めること。今の段階で理解できる必要はない。
国際法と国内法との違い(あるいは国際社会と国内社会との違い)について、Casseseはどのような点を挙げているか。箇条書きにせよ。
国際法が"laissez-faire attitude" (p. 11)をとってきたのはなぜか。
"International Law is a realistic legal system." (p. 12)というのはどういう意味か。
国際法の欠陥としてCasseseが特に挙げていることは何か。
現在の国際社会に見られる、「伝統的規則」とは異なる種類の規則――Casseseの言う"community obligations" や"community rights"(p. 16)に関する規則――は、どのような特徴を有しているか。
Casseseは、国際法の歴史を考えるにあたって、5つの時代区分(前史+4つの時代)を立てている。それぞれの時代はどのような特徴を有しているか。

 

用語に関する注意
p. 3 actors, entities, subjectsとは?
p. 4 David(s), Goliath(s)とは?
p. 4 sign the treaty, the instrument of ratificationという場合の"sign (signature)", "ratification"については、"6. International Lawmaking: Custom and Treaties" で学ぶ。
p. 4 reprisals =復仇
p. 5 function と power という用語はどのように使い分けられているか?
p. 6 relative anarchyとは?
p. 6 the horizontal structure of the international communityとは?
p. 6 the power of 'auto-interpretation' of legal rulesとは?
p. 7 the Council of the League of Nations =国際連盟理事会(条約集の「国際連盟規約」を参照。)
p. 8 Kelsen この名前を知らずして、法学部生と自称してはならない。中山竜一『二十世紀の法思想』(岩波、2000年)第1章を読んでほしい。
p. 8 blood revengeとは?
p. 8 Hoffmann 『国境を越える義務』(最上敏樹訳、三省堂、1985年)は機会を見つけて読んでほしい。
p. 9 the Vienna Convention of 1961 on diplomatic immunities = 「外交関係に関するウィーン条約」 なお、英語の正式名称はthe Vienna Convention on Diplomatic Relations。
p. 9 Triepel 19世紀末から20世紀初頭に活躍した公法学者。"8. Implementation of International Rules within National Systems" で詳しく取り扱われる。
p. 10 general international law =一般国際法 
 とりあえず、「すべての国家に適用される国際法」と理解しておいてよい。厳密には "6. International Lawmaking: Custom and Treaties" で学ぶ。
p. 12 effectiveness =実効性
p. 13 reciprocity =相互性 どういう意味?
p. 14 erga omnes =対世的な、他のすべての者に対して。ラテン語表現については、柴田光蔵『法律ラテン語辞典』(日本評論社)を図書館で参照すること。
p. 14 the wrong  このwrongは名詞。
p. 16 genocide  pp. 252-254参照。
p. 16 natural law=自然法、positive law=実定法。「自然法」とは? 「実定法」とは?
p. 17 Institut de droit international 「国際法学会」ないし「万国国際法学会」と訳される。
p. 17 the four Geneva Conventions ジュネーヴ四条約
 「戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約」
 「海上にある軍隊の傷者、病者および難船者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約」
 「捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約」
 「戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約」
詳細は15章にて。
p. 17 the 1978 First Additional Protocol
 「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約に追加される国際武力紛争の犠牲者の保護に関する議定書」
ちなみに、the Secondは、
 「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約に追加される非国際武力紛争の犠牲者の保護に関する議定書」
p. 18 "Grotian", "Kantian"
 詳細については、引用されているHedley Bullの『国際社会論』(臼杵英一訳、岩波、2000年)を参照。
p. 20 décret フランス法における命令の一種。
p. 20 de Vitoria, Suarez, Gentili, Grotius
 これら国際法の先駆者についての詳細は、田畑茂二郎『国際法 I』(有斐閣、新版、1973年)第一編第二章「近代国際法の成立と展開」を参照。
p. 28 the declaration prohibiting the use of expanding bullets
 「外包硬固ナル弾丸ニシテ其ノ外包中心ノ全部ヲ外包セス若ハ其ノ外包ニ截刻ヲ施シタルモノノ如キ人体内ニ入テテ容易ニ開展シ又ハ扁平ト為ルヘキ弾丸ノ使用ヲ各自ニ禁止スル宣言」(ダムダム弾禁止宣言)
p. 29 claims commissions 請求権委員会
 とりあえず、裁判所の一種と理解しておいて差し支えない。
p. 33 the Paris Pact of 27 August 1928 on the Banning of War
 「戦争抛棄ニ関スル条約」(不戦条約)
p. 42 the UN Convention on Racial Discrimination = 人種差別撤廃条約
the two UN Covenants on Human Rights = 二つの国際人権規約
  「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」
  「市民的及び政治的権利に関する国際規約」
the Declaration on Friendly Relations = 友好関係原則宣言
a declaration and a plan of action on the "New International Economic Order" = 新国際経済秩序樹立宣言

 

扱われている事例
p. 7 コルフ事件 事実関係を簡潔にまとめる。
 ★注 判例集33の「コルフ海峡事件」ではない。
 この事件の詳細に関する日本語文献として、岡俊孝「1923年・コルフ島の占領決定とムッソリーニ」法と政治(関学)19巻2号(1968年)。
p. 8 フォークランド(マルビナス)紛争
p. 8 Lockerbie 判例集109「ロッカービー事件」
p. 15 Le Louis Le Louis号事件(1817年)
 この事件の詳細に関する日本語文献として、杉原高嶺『海洋法と通航権』18頁以下(日本海洋協会、1991年)。
p. 17 Genocide (Bosnia and Herzegovina v. Yugoslaia (Servia and Montenegro))
 判例集110「ジェノサイド条約適用事件」