2025年度前期 国際環境法

概要

講義の記録

以下の概要はKULASISに掲載されているものと同一です。

この講義は「国際安全保障法」と交互に隔年開講されます。

講義の概要・目的

国際的な環境問題について、実際に訴訟あるいはそれに類する手続で議論された事例をとりあげ、環境問題がどのような法的問題として扱われるか、それぞれの当事者がどのような主張をし、どのような手続でどのような判断が下されるのかを学び、これらの訴訟の成果と課題とを検討する。

国際的な環境問題は、越境汚染を除いてこれまで訴訟の形で争われることは少なかったが、近年激増している。国際環境法の最先端の問題を扱うことにより、今何が問題になっているかを理解する。

日本語解説の助けを借りつつ、英文の判決等を読む。「国際」環境法であるので、その他関連資料の多くも当然ながら英語である。国際問題に取り組むために不可欠の英語を鍛える場としても活用されたい。

到達目標

環境に関する国際法の全体像を把握する。

具体的な環境問題について、国際法がどのように規律をしていて、していないか、説明できるようになる。

専門的な法学の英語文献を、日本語と大差ない速さで正確に読めるようになる。

講義計画と内容

第1部 越境汚染

 1. 越境大気汚染 Trail Smelter

 2. 国際河川ダム建設 Gabčíkovo-Nagymaros

 3. 国際河川ダム建設 Kishenganga

 4. 国際河川汚染 Pulp Mills

 5. 海洋汚染 South China Sea

 6. 海洋汚染 福島第一原発処理水排出 仮に訴訟になるとしたらどのように?

第2部 経済的義務との関係

 7. 通商と環境 US-Shrimp, China-Raw Materials

 8. 投資と環境 Eco Oro v. Colombia, Red Eagle v. Colombia

第3部 被害国を特定しない環境損害の主張

 9. 南極海における捕鯨

 10. 国内裁判所における気候変動訴訟 Milieudefensie v Shell (2021, 2024)

 11. ヨーロッパ人権裁判所における気候変動訴訟 Verein Klimaseniorinnen Schweiz

 12. 気候変動勧告的意見(国際海洋法裁判所)

 13. 気候変動勧告的意見(国際司法裁判所)

第4部 まとめ

  14. まとめ(新たな判断例が出た場合にはそれを扱う可能性あり。)

  15. フィードバック

履修要件

国際法関連科目を学部あるいは公共政策大学院(「国際法1」「国際法2」)で履修済みあるいは並行して履修していることが望ましいが、要件とはしない。

本講義では大量の英語を読み解く。その覚悟が履修要件である。

成績評価の方法・基準

平常点(40%)・レポート(20%)・期末試験(4060%) (紙媒体の「学生便覧」に示されている配分と異なっていることに注意してください。)

平常点は、講義の場における議論への参加状況により評価する。欠席していればもとより、物理的 に出席していても議論に参加しなければ評価の対象にしない。

教科書

使用しない。

参考書等

Alan Boyle and Catherine Redgwell, Birnie, Boyle & Redgwell's International Law and the Environment, 4th ed., Oxford University Press, 2021.

Philippe Sands and Jacqueline Peel, Principles of International Environmental Law, 4th ed., Cambridge University Press, 2018.

Jacqueline Peel, The Oxford Handbook of International Environmental Law, 2nd ed., Oxford University Press, 2021.

Erika J. Techera et al., Routledge Handbook of International Environmental Law, 2nd ed., Routledge, 2021.

松井芳郎『国際環境法の基本原則』(東信堂、2010年)

西井正弘・鶴田順(編)『国際環境法講義〔第2版〕』(有信堂、2022年)

繁田泰宏・佐古田彰(編)『ケースブック国際環境法』(東信堂、2020年)

薬師寺公夫ほか(編) 『判例国際法〔第3版〕』 (東信堂、2019年)

森川幸一ほか(編) 『国際法判例百選〔第3版〕』 (有斐閣、2021年)

関連URL
このサイトにて講義資料につき指示する。
授業外学習(予習・復習)等

【予習】  必要であれば日本語による解説も参考にしつつ、当該回で扱う判決等を精読してくる。それを前提に講義するので、予習は必須である。

【復習】  特に指定しない。各自のやり方に委ねる。

その他