神戸大学国際法
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ジェサップ国際法模擬裁判

P.C. Jessup International Law Moot Court Competition


 本模擬裁判に参加すると、「社会問題自主研究」として2単位が認定されます(後期)。もちろん、「社会問題自主研究」に登録しなくても模擬裁判に参加できます。

 前期には、アジアカップ国際法模擬裁判への参加を「社会問題自主研究」として単位認定します。

何をするのか 国際法を用いた世界規模のゲーム

 模擬裁判とは、架空の事実が問題として与えられ、それに基づいて、参加者が弁護人となって当事者のために法律論を組み立て、裁判形式で論争を展開するゲームです。ジェサップ国際法模擬裁判は国際法の模擬裁判ですから、国際法を用いて議論します。

 たとえば、A国人XがB国の国防省のコンピューターネットワークに侵入し、指揮命令系統を混乱させ、C国からミサイル攻撃があったという誤情報を流すことによって、B国空軍が自衛権行使としてC国に空爆をしてしまった、としましょう。
 あなたは、B国の弁護人として、国際司法裁判所においてA国の責任を追及しなければなりません。Xは何者であったか? 単なるコンピューターマニアの愉快犯だったのか? そうだとすればA国は責任を負わないのではないか?
 あるいは、あなたはA国の弁護人に任命されるかもしれません。XはA国に雇われた特殊工作員だったのではないか? だとすれば、やはりA国は責任を負わないのではないか? 負うとしても、空爆までしてしまったのはB国の軽率な行為であって、そこまでの責任を負う必要はないのではないか?・・・

 このように、国家を弁護するために、周到な調査を行い、裁判所提出書面を作成し、裁判所での弁論をする、それが国際法模擬裁判です。

 ジェサップ国際法模擬裁判は、数ある国際法模擬裁判の一つで、国際法学生連盟主催・アメリカ国際法学会後援の行事です。日本でも、10以上の大学が参加する国内予選(12月、京都。日本国際法学生協会主催)が開催され、それに勝ち抜けば、4月初めにアメリカ・ワシントンDCで開催され、世界中から代表がやってくる本大会に出場することになります。 

何が得られるのか 法の深い理解と広い視野、そして仲間

 模擬裁判は、世界中の法学部で重視されている教育手段でもあります。それは、大学の講義やゼミでは「法はこうなっている」ということを学ぶことで終わってしまいがちなのと違って、模擬裁判では「法とはこう使うものなのだ」というところまで身に付くからです。これには、数多くのメリットがあります。

 まず、大学ではなかなか経験できない「法を用いた実践(プラクティス)」を直接経験する貴重な機会となります。法は教科書や判例集の中に眠っているものではありません。法が、現実社会のさまざまな出来事とどのように関わり、どのように影響され、どのように影響を与えているのか。法は、現実社会の中で、どの程度役に立ち、どの程度役に立たないものなのか。こういったことは、実際に法を使ってみないと判りません。もちろん、裁判といっても「模擬」ではあります。しかし、学生時代にシミュレイションを経験しておくことが、将来どれほどの役に立つか、容易に想像できるでしょう。実際、あなたたちと同じような世界中の学生が、模擬裁判に数カ月間一生懸命取り組むことによって、専門家も驚く水準の議論を展開するようになり、そこからトップレヴェルの実務家や研究者がどんどん生まれているのです。 

 模擬裁判では、自分が正しいと信じることを主張することは許されません。それを正しいと思うか思わないかにかかわらず、とにかく自分が弁護する国にとって有利な議論を構築しなければなりません。麻薬密輸に関わった外交官を弁護したり、環境汚染を引き起こす国をかばったり、民族虐殺をする大統領を守ったりしなければならないのです。これは、法律家にとってきわめて大切なことです。自らが正しいと信じることが、本当に正しいことかどうか。「こんなの、無理」というような法律論を立てることを求められ、仕方なくそれに取り組んでみると、実はそれはそれほど無理でないことに気づくのはよくある話です。つまり、それまで自分が「正しい」と信じていたことにはそれほど根拠はなかった、と気づくわけです。自己の信念――第一印象――とは異なる立場からものを眺めることにより、自らの立場を相対化し、冷静に分析することができるようになる。これも、模擬裁判の大きな長所です。

 国際法の模擬裁判は、「国際」あるいは「法」にとどまるものではありません。国際法を用いますが、それはたまたま題材がそうだというだけであって、議論の内容は徹頭徹尾法律論です。ここで鍛えに鍛えた法的思考能力がほかの場面でも生かされるということは、国際法模擬裁判のOB・OGから国内法曹(弁護士・検察官・裁判官)が多数誕生していることを見れば明らかです。また、法律をめぐる議論ではあるものの、国際紛争の現実的処理を図るための議論ですから――「現実にはともかく、法律的には正しい」という議論は通用しない――、国際関係に対するものの見方を養う貴重な場でもあります。OB・OGの中に外交官や国際公務員の道に進む人も多くいるのは、当然とも言えるでしょう。

 ただ、なんと言っても模擬裁判の最大の魅力は、仲間ができることです。数カ月間共に模擬裁判に取り組むということは、おそらくは皆さんがこれまでの人生20年ほどの間にしてきた議論の合計を質・量ともに上回るだけの議論を、これでもかとばかりに数カ月間集中して仲間と繰り返すことなのです。ここから生まれる絆は、何をもってしても代え難いものです。しかも、ジェサップ国際法模擬裁判の場合、その仲間は世界中にいます。何十カ国もの大学で、学生が同じ問題に頭を悩まし、議論をして夜を明かすのです。

  私自身、オランダ・ハーグの街で、「お前、ジェサップに出てただろう!」と突然アメリカ人に抱きつかれたり、パリで出会ったメキシコ人も同じ年に参加していたと判って「あのとんでもない外交官を弁護するのは、大変だったよなあ」と話が弾んだり、とにかく「ジェサップをやっていた」というだけで10年来の知己のようになれる、という経験を何度もしてきました。このような場は、なかなかありません。

何が求められるのか 努力、努力、そして努力

 では、どうすれば参加できるのでしょうか。資格は、学部生であること(法学部でなくても構いません)、それだけです。ただし、世界大会が毎年4月に開催されますので、それに出場できるかどうかにかかわらず、そのときにはもう卒業してしまっている人は、弁論者としては参加できません(弁論者になりさえしなければ、参加自体はまったく問題ありません)。

 国際法をこれまで一切学んだことがない、という人でも結構です。大学によっては、1回生が出場してくることもあります。それでも、数カ月間必死で努力すれば、何とかなるのです。

 国際法ですから、用いる資料の大半は外国語です。フランス語やドイツ語の資料にまで手を出す大学もありますが、とりあえず英語ができれば十分です。いや、今の段階で英語ができなくても、「英語ができるようになるんだ!」という強い意志さえあれば何とかなります。英語力が否応なしにつく、というのもジェサップ国際法模擬裁判のメリットです。

求む、参加者!

 参加してみたいと思ったら、あるいは参加しようかどうしようか迷っているのだったら、ぜひ連絡してください。神戸大学の学生で参加すると決めている人も既にいますので、一緒に活動を始めてもらいます。

参加者の声

 K. Y. 

 国際法の内容はもちろん、理解・思考・議論構築・弁論能力というまさにこれから社会で必要とされるであろう力を養うにうってつけであろうと思います。生易しいものではありませんが、打ち込むものが模擬裁判というのもおつなものではないでしょうか。

 F. Y. 

 私がこの夏Japan Cupに出場して得たもの、それは、本当の意味で勉強するという経験、法的・論理的な考え方や議論する力、かけがえの無い仲間、と大きくこの三つです。

 まず、本当の意味で勉強する、ということですが、私は今まで四年間送ってきた大学生活の中で、本当に心から勉強したなぁと思ったのはこの模擬裁判が初めてです。もちろん授業にあわせた勉強はしてきましたが、それは本当の意味での勉強ではなくテストのための勉強にすぎなかったんだ、と模擬裁判をやってみて気付きました。問題文(架空の国での争いの事例問題)から論点を洗い出し、その論点に関する文献、判例、資料を国内外問わず探して読み漁って証拠を集め、それらをもとに皆で議論し、法律的な主張を構築し、書面を書き口頭弁論の練習をする、という一連の流れの中で、教科書暗記だけではない自分で考えるという勉強が出来たと思います。また、それによって、国際法の知識はもちろんのこと、法的な考え方、論理的な思考能力、議論する力など実際的な面の力もつきました。

 そして、模擬裁判本番までの四ヶ月間、時には徹夜でリポビタンDを片手に議論しあった仲間は本当に一生の友です。模擬裁判が多大な時間と労力を必要とするものであるからこそ、数ヶ月間ともに苦労を分かち合い頑張った仲間達との絆は深いものになるのだと思います。また、大会は全国14大学が参加するため、全国の熱い志を持った仲間と知り合える非常によい機会でもあります。私も多くの人と知り合いましたが、皆、はっきり夢を持ちそれに向かい努力している人たちばかりで非常に刺激を受けました。

 全力で何かに打ち込んでみたい方、国際法に興味のある方、模擬裁判に興味のある方、サークルに入りそびれた方、卒業まで時間を持て余してる方、どんな方でも(1〜4回生まで)興味のある方はとりあえずどんなことをするのか見に来てみませんか。絶対にやって損はしません!得るものは大きいです!!新しい仲間を募集中なのでぜひ連絡してください。

 T.T.

 国際法模擬裁判のいいところ・・・国際法に詳しくなれる、ロジックを学べる、そして何より熱い仲間(と熱い先生)に出会えること! さらに現役プロの学者と対決することができ、議論を組み立て、壊され、再構築することの面白さ、難しさを実体験できること!!

 B.K.

 私は4回生で初めて国際法模擬裁判に参加しました。実際、4回生ともなると、 サークルや就職活動など、大学生活の中ではすでに培った経験があるような 錯覚がありましたが、そんなことは全く関係ありませんでした!! そして、3ヶ月にも満たない準備期間にも関わらず、とても成長できました。

 自分達の考えを一つの弁論にまとめるためには、様々な能力が問われました。情報の収集はもちろんのこと、国際法の基礎的な理解、話し合うこと、話し合いを一つにまとめること、論理的な思考、考えたことを文章として形にすること、などなど、こうしたこと全部まともに出来ない有様でした。

 さらに本番では、教授扮する裁判官の前で自ら弁論を自ら行わねばならないので、プレゼンテーション力や度胸、とっさの判断、冷静さが必要でした。しかし、今思えば、私は冷静ではありませんでした(汗)

 しかしそんな中で、それをやり遂げられたことは自信になり、その3ヶ月間を同じようにして頑張ってきた仲間と出会い、参加できたことは大学生活の中で大切な宝物です。

 少しでも興味を持ったら、是非参加して下さい!!絶対損はしませんよ。

 S.K.

 まず国際法という分野自体が非常に面白いと思います。国際社会という大きなものを対象としているだけに起きる問題も複雑で、国内法とはまた違った面白さがあると思います。私は今年の4月から国際法の勉強を始めたのですが、すっかり国際法にはまってしまいました。

 また模擬裁判は国際法の知識がつくことはもちろん、論理力なども鍛えられますし、大会までの間、夜遅くまで(ときには徹夜をして)メンバーと協力して資料を探したり、討論しながらメモリアルを完成させたときの嬉しさ、大会が終了したときの充実感は格別です。大変だけど面白い、面白すぎて一回経験したらやめられません! ぜひ一緒に国際法模擬裁判の魅力を堪能しましょう!