講演会

「国際法を用いた法曹実務」

 10月18日(金)5限・法経本館第9教室

対象:法学研究科院生(法曹養成専攻・法政理論専攻)・公共政策大学院生・法学部生をはじめ、関心ある学生全て

演題

講演1「国際裁判所での実務・世界の弁護士事務所における国際法実務」(M本)

講演2「国際投資法と弁護士のやるべきこと」(井口直樹弁護士(長島・大野・常松法律事務所))

その後、井口弁護士との質疑応答

 


 日本では、国際法と法曹実務とを結びつけて考えることは、法学部生でも稀と思われる。国際法が関係する実務と言えば、外務省が思い浮かぶぐらいではなかろうか。経産省環境省もそうだと思う学生もいるかもしれない。逆に、法曹実務と「国際」と言えば、国際民事法がまず頭に浮かぶだろう。

常設仲裁裁判所Abyei事件口頭審理 (2009)】

 もちろん、国際法実務において官庁が果たす役割は極めて重要であるし、国際民事実務における弁護士の役割は説明するまでもない。しかし、国際法と法実務あるいは法曹と「国際」との接点はそこだけではない。世界的に見れば、国際法が関係する事案における弁護士の果たす役割は極めて大きいのである。国際司法裁判所国際海洋法裁判所における弁護を(いずれかの法圏において弁護士資格を有する)弁護士が担当することもある。国際刑事裁判所人権条約実施機関の個人通報制度についてもそうだ(後者についてはいまだに日本は参加していないが)。そして、近年重要になっているのは、WTOや投資仲裁における実務である。投資仲裁を例にすると、投資紛争解決国際センター(ICSID)に現在継続している仲裁事案のリストを見れば、ずらりと弁護士事務所の名前が並んでいることに気がつくだろう。

 実に、実務法曹にとって、国際法は宝の山である。たとえば、国際法のことなら我々に任せて、という大手弁護士事務所のウェブサイトをいくつか見てみると、Shearman & Sterling, White & Case, King & Spalding, Foley Hoag, Cleary Gottliebなど、きりがない。Freshfieldsのサイトを見ると、業務分野として、金融紛争や製造物責任と並んで国際法が掲載されている。

 ところが、確かに日本では国際法と法曹実務とは結びつけて考えられることがいまだに少ない。日弁連などが「国際分野のスペシャリストを目指す法律家のためのセミナー」を毎年開催するなど、状況を改善させようという努力は続けられているが、学生の理解が大きく変わったとは残念ながら言い難い。

 そこで、この講演会では、M本から国際法と法曹実務の全体像について簡単に説明した後、国際法を弁護士実務の日常において活用し、日本内外で大活躍しておられる井口直樹弁護士を招き、実務において国際法をどのように使っているのか、そのような弁護士を目指すなら学生は何をしなければならないのか、お話し頂く。その後、学生からの質問にお答えいただく時間を設ける。何らかの形で「国際」に関心ある学生の参加を歓迎する。