2023年度後期 国際機構法

概要

以下の概要はKULASISに掲載されているものと同一です。

講義の記録

講義の概要・目的

プロセスとしてのinternational organization(国際社会の組織化)と被造物としてのinternational organization(国際機構)との法的意義を検討することを通じて、国際関係を法的に把握する力を養成する。

国際機構法は、現在の国際社会を法的に見るための重要な視点を提供してくれる。加えて、国内法とは異なる観点から眺めることにより、「法」について考えを深める手がかりともなる。

本講義では、「読めばわかる」「調べればわかる」ことは予習に委ね、教室では読んでも調べてもわからないことについて議論を重ねる。教員の話をじっと聞いて頭にたたき込むのではなく、講義外で得られる情報は自力で得てきた上で、それを基に討論を重ねて理解を深める、学生参加型の講義である。

到達目標

主権国家という独立した構成員からなる全体集合(国際社会)において、どのようにして・どの程度組織化された秩序を構成しているのか、法的な観点から理解する(プロセスとしてのinternational organization)。

国連・ILO・WTO・EU・ASEANなどの国際機構の構成および活動について、法的な観点から説明できるようになる(被造物としてのinternational organization)。

調べて得られる情報を基に自らの意見を構築し、講義における議論への参加を通じて、自らの意見を効果的に伝達する方法を身につける。

講義計画と内容

詳細なシラバスは9月に担当教員のウェブサイト上に公開する(9月24日公開)。以下は概要である。

第1部 国際機構法の萌芽期

 1. 国際機構法前史 会議・行政連合・河川委員会・国際連盟・ILO

 2. 国際機構法の誕生 損害賠償勧告的意見

第2部 国際機構法総論

 1. 参加

 2. 権限

 3. 内部構造

 4. 意思決定過程

 5. 規範定立・条約締結

 6. 財政

 7. 責任(1)――行為の帰属

 8. 責任(2)――国際機構の活動に関する国家の責任

 9. 紛争処理(1)――国際機構と構成国との紛争

 10. 紛争処理(2)――国際機構と私人との紛争

 11. 紛争処理(3)――国内法上の手続からの免除

 12. 脱退・消滅

 13. 国際機構に類似の存在

第3部 ヨーロッパ連合――地域統合の一例

 1. 統合の経緯および機構的構造

 2. EU法の特質 直接適用可能性・優越性

第4部 国際機構の活動分野

 1. 保健衛生 WHO

 2. 経済――通商(1)WTO 全体構造・各機関の役割

 3. 経済――通商(2)WTO 紛争処理制度

 4. 経済――投資(1)投資紛争処理の歴史的展開

 5. 経済――投資(2)国際機構(ICSID・PCA・国連(UNCITRAL・UNCTAD)・OECD)および私的機関(SCCなど)

 6. 経済――金融 IMF・IBRD・IFC・IDA・地域的金融機構

 7. 環境――気候変動 国連・条約当事国会合

 8. 環境――生物多様性 国連・条約当事国会合

 9. 環境――海洋汚染 国連・IMO

 10. 刑事――ニュルンベルク軍事裁判・極東軍事裁判・ICTY・ICTR・SCSL・ECCC

 11. 刑事――ICC

第5部 まとめ  フィードバック2回

履修要件
受講生は、「国際法(総論・領域)」および「国際法(対人管轄・紛争)」を履修済みであるかあるいは並行して履修している、と想定して講義する。もちろん、これら科目の単位を取っていなければ「国際機構法」を履修できないという趣旨ではない。
成績評価の方法・基準
期末試験(110分)により、法学部が定める成績評価の方針に従って到達目標の達成度を評価する。
教科書

特に指定しない。

参考書等
シラバスを参照。
授業外学習(予習・復習)等

毎回の講義時に、予習のための資料を配付ないしそのダウンロードを指示する。詳細は、9月にM本のサイトに掲載するシラバスに掲載する。

教室での講義は予習課題を踏まえた議論であるため、十分な予習は必須である。

「国際」機構法であるため、本講義で用いられる資料の多くは英語である。英語力を鍛える機会としても活用されたい。

その他

教室には、教員の話や他の学生の発言を聞くためにではなく、教室全体での議論に参加するために来ていただきたい。個人的な事情により口頭での議論に参加することはできないがそれでも講義に出席したい、という学生は、事前に連絡すること。

初回講義の予習課題は、9月に担当教員のウェブサイトに掲載する。過去の講義についても掲載しているので、参照しておいていただきたい。