神戸大学国際法
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神戸大学法学部 2007年度前期

ヨーロッパ(EU/EC)法

講義の記録


講義シラバス
シラバス訂正版(5月25日配布)
シラバス第3版(6月15日配布)

履修カード 4月20日の講義開始時に提出してください
 


「はしか休校(6月1日〜12日)」への対応

期末試験

授業アンケート


 

掲示板 (IDは講義中に説明します)


4月13日 導入 講義の全体像 EU概説
配布資料
次回講義への予習課題
  1. 配布資料の第1章
4月20日 欧州統合史

配布資料

  • 『EUを知るための12章』の改訂版(現在は英語仏語のみ)
4月27日 機構

次回講義への予習課題
 連休・休講で3週間空きますので、しっかり予習してきてください。

  • 佐藤幸治「第98条」樋口陽一ほか『憲法IV 第76条〜第103条』(青林書院、2004年)
  • 岩沢雄司「国際法と国内法の関係」小寺彰ほか編『講義国際法』(有斐閣、2004年)
  • 小寺彰「国際法と国内法」「条約の自動執行性」小寺彰『パラダイム国際法』(有斐閣、2004年)
  • 伊藤洋一「EC条約規定の直接適用性」法学教室263号(2002年)
  • 伊藤洋一「EC法の国内法に対する優越(1)〜(3)」法学教室264〜266号(2002年)

 次回講義(5月18日)では、3つのことを学びます。

  1. シラバス「4月27日」の課題の積み残し
    1. 黙示的権限
    2. アキ・コミュノテール
    3. 補完性原理
      このうち、「黙示的権限」は丁寧に、後の2つはごく簡単に触れるだけです。配布の翻訳の該当箇所(pp. 28-38)をきちんと読み直しておいてください。
  2. ヨーロッパ(EU/EC)法の存在形式
  3. 佐藤・岩沢・小寺論文を用いた、「国内法秩序における国際法の位置付け」について基本的な議論

「1.」については、Kさんのコメントを見て、やはりやらねばならないと判断しました(Kさん、コメントありがとうございました)。時間がなければ、「3.」はできないかもしれません。その場合は「3.」は5月25日に回しますが、せっかく3週間も余裕があるので、上記関連文献はこの間に読んでおいてください。

5月4日 みどりの日
5月11日 休講 伊藤光利先生のシンポジウム(六甲ホール 15時〜18時)に参加してください。
5月18日

権限配分・法規範の存在形式

次回講義への予習課題

  • 4月28日配布予習課題
  • シラバスに記された判例集該当部分
5月25日 直接適用可能性

配布物

次回講義への予習課題

  • シラバス訂正版参照
  • Costa v. ENEL判決

「はしか休校(6月1日〜12日)」への対応

 今回の突然の休校措置により、2回の休講を余儀なくされました。これを補うために、法学部ではさまざまな補講措置がとられます。しかし、「ヨーロッパ(EU/EC)法」については、補講候補日として示された日につき、非常な不都合があることが判明しました(私の他の講義が入っている、本来の講義日の直後であるため意味のある形で予習時間が確保できない、など)。
 そこで、やむなく、補講は行わないことに決めました。もとより、それにより教育内容あるいは質を落とすことは許されませんので、1回の講義あたりの内容が増え、予習課題も多くなることになります。
 とりあえず、「はしか休校」決定直後にお知らせしていたように、6月15日の予習のみならず、22日の予習もしておいてください。6月15日の講義では、take home examの形式で行う中間試験の問題をお渡しします。したがって、15日から22日の間には、22日の講義に向けた予習をする時間が余り確保できないと思われます。しかしながら、22日の講義においては、受講生のみなさんが完璧に予習してきていることを前提に講義を行います。
  講義が2回分減りますので、その分、1回あたりの予習課題が増え、講義のスピードも上がります。今まで以上に予習を丁寧にしてきてください。
  シラバス訂正版を配布したばかりですが、今回の休校に対応して、シラバス第3版を15日の講義で配布します。

6月15日 優越性

配布資料

次回講義への予習課題

  • シラバス第3版参照
  • 中村民雄「行政訴訟に関する外国法制調査――EU」ジュリスト1247号(2003年)

中間試験 6月15日出題・6月22日提出・6月29日返却

 本来であれば、問題と講評(講義で配布しました)を掲載したいところですが、この時期に見舞われたパソコンの大規模トラブルのため、ファイルがすべて消えてしまいました。

6月22日 司法裁判所

配布資料

  • 司法統計
    裁判所HPからダウンロードできる年次報告書に掲載されています。講義では各国語版を取り混ぜて配布しましたが、とりあえず英語版のページにリンクしておきます。
  • 裁判所規程
    これも裁判所HPからダウンロードできます。

次回講義への予習課題

  • シラバス第3版参照
6月29日 物の自由移動

配布資料

  • Rewe-Zentral v Bundesmonopolverwaltung für Branntwein, Case 120/78, 20 February 1979, R. 649. 判例集コピーを配布しましたが、これも裁判所HPからダウンロードできます。
  • Communication from the Commission concerning the consequences of the judgment given by the Court of Justice on 20 February 1979 in case 120/78 ( 'Cassis de Dijon'), Official Journal C 256, 03/10/1980, pp. 2-3. EC/EU官報は、EUR-LEXからダウンロードできます。

次回講義への予習課題

  • シラバス第3版参照
  • Sirdar v The Army Board, 26 October 1999, C-273/97, R. I-7403.
  • Kreil v. Bundesrepublik Deutschland, 11 January 2000, C-285/98, R. I-69.
  • 水島朝穂「ジェンダーと軍隊――欧州裁判所判決とドイツ基本法」法律時報73巻4号(2001)
  • 庄司克宏「EU難民政策の理念と現実」世界2007年4月号
7月6日 人の自由移動

次回講義への予習課題

7月13日 市民権・民主主義

配付資料

  • Communication from the Commission, European elections 2004, 12 December 2006, COM(2006) 790 final.
  • Report from the Commission on the right to vote and to stand as a candidate in municipal elections, 30 May 2002, COM(2002)260 final. いずれの文書もEUR-LEXからダウンロードできます。
講義中に説明した事情により、7月20日は休講とします。

期末試験

 試験問題

講評

 思いのほかの出来の悪さに驚きました。と同時に、強く反省しました。講義に参加していた人のかなりが(全員とは言いませんが)非常に熱心に取り組んでいたことは確かです。にもかかわらず、このような答案が出てくるとは、よほど教え方がまずかったか、試験問題の作り方に難があるか、いずれかでしょう。改めて考え直してみます。

 どういう意味で出来が悪かったか。問題は、簡単に言ってしまえば、「正統性の要素を複数抜きだし、それがどのように制度化・機構化されているかを示せ」ということです。ところが、そもそも「正統性の要素」を複数抜き出すことができた人はほとんどいませんでした。講義では何度も言及していたはずなのですが……。

 多くの答案は、前文にある「障壁の除去」などに注目し、「共通市場の形成」などが正統性の要素であるとした上で、4つの自由の内容について書き連ねています。それはそれで悪くはありません。試験問題中の「注」にあるように「内容的に正しいから従う」という場合に当てはまりますので。しかし、これだけで終わってしまうと、問題です。

 まず、問題中に「複数見つかるはず」と書いています。共通市場の形成に関する要素をいくつあげても、それは正統性の要素としては同種のもの(目的・内容に基づく正統性)ですので、十分ではありません。さらに、4つの自由について述べるだけでは、「機構」について述べたことにはなりません。せめて、国家から独立した機関である委員会が強力な権限を有していることを説明しなければ。

 前文に現れた正統性の要素としては、共通市場の形成などの目的・内容に基づく正統性に加えて、以下のものがあります。

さらに、条約というスタイルを使っていることから、「合法的正統性(法に従っていることから得られる正統性)」を導くこともできるかもしれません。ちなみに、「法の支配」や「法治国家」という表現は、講義でも話したとおり、EC条約ではなくEU条約の前文に登場します。

 このような正統性の要素がどのように「具体的な制度・機構に現れているか」は、たとえば次のように示すことが考えられます。

採点基準

 これを出発点に、情報量の多寡・正確さ、構造の明確さに応じて加点・減点しています。

成績分布

 
不可・放棄
割合
23%
46%
15%
15%

(小数点以下処理の関係で100%になりません。)

 なお、上記成績は、中間試験の評価を考慮に加えた上での最終成績です。


授業アンケート 2007年7月13日実施 学部共通フォーマット 無記名 回答数 8 (10月1日掲載)

5段階評価 5が「とてもそう思う」 1が「全くそう思わない」

質問項目
平均値
教員の話し方は、聞き取りやすかった。
4.88
教員の話し方は、ノートがとりやすかった。
3.38
指定された教科書は授業の理解に役立った。
5.00
配布されたレジュメ等は授業の理解に役立った。
4.88
黒板、OHP、ビデオ等の使い方は適切だった。
4.25
一回あたりの授業の進度もしくは分量は適切だった。
3.88
授業はシラバスに沿って行われた。
5.00
教員は、受講生の理解度を正しく把握していた。
4.63
教員は、学生の質問に丁寧に対応していた。
5.00
理解を深める工夫がなされていたと思った。
4.88

教える側の意欲が感じられた。

5.00
授業の内容はわかりやすかった。
4.50

授業内容は知的興味を引くものだった。

5.00
この授業を受講して、新しい知識や物事の見方が得られた。
5.00
他の学生にこの授業を履修することを勧めたい。
5.00

 

自由記述

 

 

M本コメント

 急にはしか休校があったりして、日程の関係で補講がうまく設定できず、結果として後半は大幅な「詰め込み」になってしまったことは残念であったと共に、改めておわびします。他方、前半部分はかなり退屈であったのではないかと思います。前半は私もかなり手探りで、受講生の反応を見ながら方法を少しずつ変えていきました。

 上記指摘にもあるように、そもそもどの程度の内容を2単位のこの講義に盛り込むかでかなり悩み、結果としてやや底の浅い講義になってしまったことは大きな反省材料です。4単位化するのは(するに越したことはないのですが)現状では諸般の事情により困難ですので、来年度については、取り扱うべき事項の選別をより丁寧に行うことが第一の課題になります。

 また、予習課題についても、必ずしも適切ではないものや、内容が曖昧で課題の内容がはっきりしないものがいくつかありますので、それについても改善を考えます。

 さらに、上にも書いたように、試験についてはかなり反省しています。中間試験以外にも小テスト等を取り入れて、「書く」練習をもう少しした方が良いのかもしれません。来れも、来年度に向けての課題です。

 ともあれ、半期の間、熱心に取り組む受講生に囲まれていたのは幸いでした。みなさんの今後の活躍を期待しています。