神戸大学国際法
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神戸大学大学院国際協力研究科 2005年度後期

国際投資法

講義の概要

直近の改訂 2005.10.17.


○授業概要

  日本から外国へ、あるいは外国から日本へなされる投資につき、国際法がどのような保護・規制をしているかを学ぶ。日本が最近力を入れ始めた自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)においても投資は重要な部分を占めており、実務上重要な課題となっている。また、企業という伝統的には非国際法主体と考えられている実体と国家との関係を主として取り扱う法分野であるため、国際法秩序において非国家主体が果たす役割について考える格好の題材を提供してくれる。

 

○授業形式および使用テキスト

授業の進め方等

 参加者による報告を基礎とし、全員で討論することにより行う。参加者はパワーポイント等のプレゼンテーションソフトを必ず用いて報告する。報告の仕方・討論の仕方を学ぶことも、本講義の目的である。

使用テキスト

「教科書」は使用しない。

評価の方法

 授業における報告・討論(60%)および期末に課すレポート(40%)。

 報告者以外も論文・裁判例を熟読してきていることを前提に討論を行い、その討論も評価の対象となることに留意すること。なお、2回以上無断で欠席した者に対しては単位は与えられない。

授業の予定、課題、論点

以下の文献・裁判例をこの順でとりあげる予定である。新たな仲裁事例が公表された場合は追加・変更もあり得る。

  1. 国際投資法の基礎
     
    1. 基礎理論1 外交的保護
      • 田畑茂二郎「外交的保護の機能変化(一)・(二・完)」法学論叢52巻4号(1946年)、53巻1・2号(1947年)
      • 加藤信行「自国民の対外紛争」小田滋古稀『紛争解決の国際法』(三省堂、1997年)
       
    2. 基礎理論2 私人の国際法主体性
      • 田畑茂二郎「個人の国際法主体性に関する論争について(一)(二・完)」法学論叢35巻4号(1936年)、36巻2号(1937年)
      • 田畑茂二郎「国際法における国家と個人の関係の変化について」国際法外交雑誌46巻2号(1947年)
      • 加藤信行「国際法と個人」国際法学会編『日本と国際法の100年 第5巻 個人と家族』(三省堂、2001年)
       
    3. 基礎理論3 国有化・収用に関する伝統的議論
      • 香西茂「外人財産の収用と国際法」法学論叢61巻3号(1955年)
      • 田畑茂二郎「国有化をめぐる国際法の問題点」田岡良一・田畑茂二郎監修『外国資産国有化と国際法』(日本国際問題研究所、1964年)
      • 安藤仁介「インドネシアによるオランダ系企業の国有化について」田岡良一・田畑茂二郎監修『外国資産国有化と国際法』(日本国際問題研究所、1964年)
       
    4. 基礎理論4 「国家契約」の法的性質
      • TEXACO事件 Sentence arbitrale du 19 janvier 1977, Journal du droit international, 1977, pp. 350-389(英訳、53 ILR 389)
      • 参考文献
        • 川岸繁雄「コンセッションと国際法」国際法外交雑誌79巻1号(1980年)
        • 川岸繁雄「国家契約における仲裁条項の機能」国際法外交雑誌82巻3号(1983年)
        • 河野真理子「国際仲裁に見られる国家契約の性質」国際関係論研究5号(1986年)
        • 中川淳司「国家責任と契約責任の交錯――経済開発契約を素材に――」国際法外交雑誌90巻5号(1991年)
        • 位田隆一「開発の国際法における国有化紛争の解決――仲裁裁定の変遷からみた実効的解決の模索――」法学論叢132巻4・5/6号(1993年)
        • 位田隆一「開発途上国における国有化紛争の実効的解決――その法理論的分析――」小田滋古稀『紛争解決の国際法』(三省堂、1997年)
        • 多喜寛「国家契約(経済開発協定)と『根本法秩序』(又はGrundlegung)」法学新報104巻4・5号(1998年) 
           
    5. 基礎理論5 外国行為の承認執行
      • Anglo-Iranian石油会社事件
        • 東京地方裁判所判決1953年5月27日下民集4巻5号755頁
        • 東京高等裁判所判決1953年9月11日下民集4巻9号1269頁
        • Supreme Court of Aden, Anglo-Iranian Oil Co.Ltd. v. Jaffrate, [1953] 1 W.L.R. 246.
        • Court of Venice, Anglo-Iranian Oil Co.Ltd. v. Unione Petrolifera per l'Oriente SpA, March 11, 1953, 22 ILR 19.
        • Civil Court of Rome, Anglo-Iranian Oil Co.Ltd. v. Unione Petrolifera per l'Oriente SpA, September 13, 1954, 22 ILR 23.
      • 参考文献
        • 杉山直二郎「イラン石油国有化法の国際的効力」比較法雑誌2巻2・3・4号(1954年)
        • 横田喜三郎「国有化の国際的効力」比較法雑誌2巻2・3・4号(1954年)
        • 江川英文「国有化の国際的効力――主として国際私法の観点から――」比較法雑誌2巻2・3・4号(1954年)
        • 大平善梧「国際法優位性の限界――イラン石油事件に関連して――」比較法雑誌2巻2・3・4号(1954年)
        • 折茂豊「外国国有化法と『公序』」国際法外交雑誌61巻5号(1962年)
        • 折茂豊「国有化行為の渉外的効力」法学(東北大学)28巻3号(1964年)
           
     
  2. 最近の仲裁事例の検討
    1. ICSID手続の全体像
       Wena対エジプト事件
      • Decision on Jurisdiction of June 29, 1999, 41 ILM 881; 6 ICSID Reports 74.
      • Award of December 8, 2000, 41 ILM 896; 6 ICSID Reports 89.
      • Decision on Application for Annulment of February 5, 2002, 41 ILM 933; 6 ICSID Reports 129
         
    2. 投資紛争に適用される法
       Goetz対ブルンジ事件
    3. 環境保護と投資保護
       Metalclad対メキシコ事件
    4. 「公正かつ衡平な待遇」
       Pope & Talbot対カナダ事件
    5. 最恵国待遇の対象範囲
       Siemens対アルゼンチン事件
    6. 「収用」概念の外延
       Joy Mining Machinery Ltd対エジプト事件
    7. 契約違反と条約違反
       SGS対パキスタン事件  SGS対フィリピン事件
    8. 経済危機と投資保護
       CMS対アルゼンチン事件

 

○参考文献

 国際投資法のおおよその姿をつかんでおきたいという学生には、講義開始までに次の日本語文献を読んでおくことを薦める。

 

○メッセージ 

 受講を予定している学生および関心のある学生は、講義開始までにM本まで連絡されたい。