神戸大学国際法
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神戸大学法学部 2005年度前期

国際機構法

講義の概要


第1回講義予習課題 修正の上再掲


○授業のテーマと目標

 国際機構の歴史と現在を法的観点から眺め、それを通じて、プロセスとしてのinternational organization(国際社会の組織化)と被造物としてのinternational organization(国際機構)との法的意義を検討する。

 なお、本講義においては、主として国際連合を採りあげ、国連以外の国際機構には、必要な限りで触れるにとどめる。

 

○授業内容の要旨と授業計画

  初回講義にて詳細なシラバスを配布する。以下に、講義で取り扱う問題の全体構造を示す。

はじめに
 1)本講義のねらい 法の問題を議論するためになぜ歴史を見るのか
 2)国連が直面する諸問題 『だから、国連は何もできない』『国連幻想』

I. 前史 シャルルマーニュ、ヨーロッパ協調、そして国際行政連合

II. 第一次世界大戦と国際連盟の誕生
 1)国際法理論への衝撃
 2)法律家のベル・エポック
 3)連盟の崩壊 「連盟の」失敗なのか?

III. 国際連合の成立
 1)国際連合はなぜ必要とされたか
 2)組み込まれた矛盾
  a)43条協定
  b)拒否権
  c)集団的自衛権

IV. 国際機構の「独立」
 1)国際法人格
 2)黙示的権限
 3)行為の有効性の推定
 4)「内部法」の発展 国際公務員 行政裁判所

V. 集団安全保障体制の危機と変容
 1)朝鮮戦争 「平和のための結集」決議
 2)平和維持活動の誕生

VI. 規範外交の舞台へ
 1)途上国の増加 数の力
 2)意思決定プロセスの変化
  a)総会決議の規範的価値
  b)実質的平等の主張
 3)国際経済構造変革への挑戦と挫折 NIEO

VII. 「国家の退場」?
 1)国境の壁を越える国際機構
   国際人権規範・機関の発展と「内政」への「介入」
 2)国家意思の制約を越える国際機構
  a)安全保障理事会の強制行動の多様化
  b)地域統合
 3)領域を統治する国際機構
 4)非国家主体と国際機構との関係

VIII. 国家の反撃
 1)意思決定過程の舞台裏での操作 派遣
 2)権限の奪回 安保理による武力行使の"authorization"
 3)決定への不服従
  a)分担金不払い
  b)安保理が決定する制裁措置の不遵守
 4)無視 究極の攻撃
  a)コソヴォ
  b)イラク

おわりに 国際機構のこれから

 

○教科書・参考書

 1点必携

 参考書・参考文献リストを初回講義時に配布するほか、必要な資料を各回講義時に配布する。講義対象の性質上、少なからぬ英語資料を配付することとなる。

 

○履修上の注意

 国際法概論、および、憲法・行政法・国際関係論関連科目を履修済であるか並行して履修することが望ましい。

 講義は、十分な予習を前提に、ほぼ100%対話形式で行われる。

 

○成績評価方法 期末試験・平常点・レポート

 期末試験を行う。また、受験者の有利にのみ働く中間試験も行う。

 

○オフィスアワー

 開講時に指示する。それ以外の時間であれば、e-mailで事前連絡すること。

 

○ 学生へのメッセージ

 2004年12月に、国連改革ハイレベル委員会が、"A More Secure World"と題する報告書を国連事務総長に提出した。国連には、どのような改革が求められているのだろうか。そもそも、なぜ国連をはじめとする国際機構が必要なのだろうか。国際機構は何かの役に立っているのだろうか。国際機構を法的に検討することにより、何らかの答を探してみよう。なお、将来の目標として国際公務員を考えている学生には、必ず受講してほしい。担当教員の過去の講義についてはHPに詳細が掲載されているので、参照されたい。