神戸大学国際法
表紙へ     講義のページ

神戸大学法学部 2005年度後期

国際紛争と法

講義の概要


受講を考えている学生諸君へ(2005.07.07.)

 初回講義までに、任意の国際法教科書の「紛争の平和的処理」の章を熟読しておいてください。

 この講義では、教科書を使用しません。しかし、講義は国際法の各分野にわたりますので、国際法の教科書を少なくとも一冊購入し、講義時に持参すると共に予復習に活用する必要があります。既に教科書を持っている人はそれで結構です(ただし、改訂されている場合は最新の版を購入してください)。持っていない人は、松井芳郎ほか『国際法〔第4版〕』(有斐閣Sシリーズ、2002年)が良いでしょう。

○授業のテーマと目標

 中央機関による強制執行の存在しない国際法体系において、紛争処理のために法はどのような役割を果たしているのか、いないのか。一見する限り法はなんの役にも立ちそうにない国際紛争過程を法の観点から検討することにより、「法」について、また、国際関係についての理解を深めることを目標とする。

 

○授業内容の要旨と授業計画

 初回講義時に詳細なシラバスを配布する。以下は講義の概要である。

はじめに
 1)講義で取り扱う問題の全体像
 2)「国際紛争処理法」の「体系」?

I. 事例1 イラン・イスラム革命
 1)紛争の発生 大使館・領事館の占拠
 2)国際司法裁判所への提訴
 3)仮保全措置命令とその無視
 4)国際司法裁判所での審理とイランの欠席戦術
 5)米の武力による「自力救済」失敗
 6)国際司法裁判所の判決、無視される
 7)水面下での交渉 仲介
 8)不明朗な合意による処理 「イラン・アメリカ請求裁判所」の設立

II. 事例2 ロッカービー事件
 1)テロ行為による民間航空機の撃墜
 2)国連安保理での紛争処理模索 国連憲章第6章
 3)安保理での手続を妨害するための国際司法裁判所への提訴
 4)国際司法裁判所での手続を妨害するための安保理決議採択 憲章第7章
 5)安保理に対するアフリカ諸国の「反乱」
 6)交渉 撃墜行為実行犯の引渡と制裁の終了

III. 事例3 東ティモールの占領と独立
 1)ポルトガルの植民地支配からの「独立」
 2)インドネシアによる「併合」
 3)安保理は非難、そして沈黙
 4)国連の地道な活動 その意義と限界
 5)ポルトガルがオーストラリアを国際司法裁判所に提訴
  a)なぜポルトガルが?
  b)なぜオーストラリアを?
 6)スハルト政権の崩壊と東ティモールの混乱
 7)国連による暫定統治、そして独立

IV. 事例4 みなみまぐろ事件
 1)日本がオーストラリア・ニュージーランドに訴えられる
 2)国際海洋法裁判所での暫定措置手続
  a)オーストラリア・ニュージーランドの訴訟戦術
  b)日本の「敗訴」
 3)仲裁裁判所での審理 日本の「抵抗」、そして「勝訴」
 4)日本と仲裁裁判所に浴びせられた批判 日本はエゴイスト?

おわりに 国際紛争における法の役割 

 

○教科書・参考書

 

○履修上の注意 

  1. 国際法概論および国際機構法を履修していることが望ましい。
  2. 講義は、十分な予習を前提に、ほぼ100%対話形式で行われる。
  3. 初回講義の予習課題を7月頃にHPに掲載する予定である。(本ページ冒頭を参照のこと。)

 

○成績評価方法 期末試験・平常点・レポート

 期末試験を行う。また、受験者の有利にのみ働く中間試験も行う。

 

○オフィスアワー

 開講時に指示する。それ以外の時間であれば、e-mailで事前連絡すること。

 

○ 学生へのメッセージ

 無責任な理想主義をとらず、現実を見ない自称「現実主義」の立場もとらず、国際関係において国際法がどのような役割を果たしているかを冷静にかつ丁寧に見ていこう。