ウクライナ問題国際法関連情報
2022.03.01.掲載開始(2022.04.08.直近の更新
)
/ 2019年の国際法ニュース(国際法ニュースはその後休止中)
事実関係
ロシアの主張
ウクライナの主張
ロシアの軍事行動に対するjus ad bellum上の評価
DPR/NPRの国家承認に対する評価
武力紛争法・国際刑事法上の問題
難民問題
国連の対応
「制裁」措置
外交関係法上の問題
投資法上の問題
WTO法上の問題
国際司法裁判所への提訴
ウクライナのEU加盟申請
ヨーロッパ評議会・ヨーロッパ人権条約からの脱退・除名
スポーツ法上の問題
事実関係
ロシアの主張(ロシア政府サイトへのアクセスが不安定であるため、別ソースを用いています)
- 軍事行動の法的根拠(ロシア国連代表2022年2月23日声明末尾)
- 国連憲章51条
- 同条に基づくロシアの報告(S/2022/154)(3月7日に「報告がかなり遅れていることが推測される」と記していたが、この報告の日付は2月24日なので、単にネット上への掲載が遅れただけのようである。)
- 大統領声明を添付するだけという異例の形式
- ウクライナのどの行為が51条にいうarmed attackを構成するのかについて説明なし
- 「自衛」の目的は "to protect people who have been subjected to abuse and genocide by the Kiev regime for eight years"(英語版6頁)
- 51条(自衛)を援用していることは、それが認められなければ2条4項違反となることを自覚していることを示す。
- DPR/LPRとの友好協力相互援助条約
ウクライナの主張(ウクライナ政府サイトへのアクセスが不安定であるため、別ソースを用いています)
ロシアの軍事行動に対するjus ad bellum上の評価
- 「侵略」と評価する立場(参考:侵略の定義に関する決議(1974年国連総会決議3314(XXIX)))
- 「侵略」という表現を用いずに国際法(国連憲章2条4項)違反と評価する立場
- 国際法違反とは評価しない立場
- ロシアによる軍事行動を(自衛権の行使として)支持する立場
DPR/NPRの国家承認に対する評価
武力紛争法・国際刑事法上の問題
- ロシアもウクライナも、ジュネーヴ諸条約および第一追加議定書の当事国
- 赤十字国際委員会総裁声明
- 国際刑事裁判所
- ウクライナによる外国人義勇兵の募集(外務大臣声明2022年2月27日)
- ロシアによるザポリージャ原発(周辺施設)攻撃
- ロシアによるクラスター弾の使用
- ロシアによる非軍事目標の攻撃
- ロシアによる病院の攻撃(2022年3月10日)
- ウクライナによるロシア捕虜の動画配信
- ロシアによるマリウポル住民の強制移住(との主張)
- ロシアによるブチャ等における文民の殺害(の疑い)
難民問題
国連の対応
- 安全保障理事会
- 2022年2月25日
- 決議案S/2022/155
- ロシアの行動は侵略であり、国連憲章2条4項に反するとして非難(deplores)(パラ1)
- DPR/LPRの地位に関するロシアの決定(承認)は国連憲章の諸原則(2条)に反するとして非難(deplores)(パラ5)。当該決定を直ちに撤回する義務(パラ6)。
- 賛成11、反対1(ロシア)、棄権3(中国・インド・アラブ首長国連邦)(安保理プレスリリース)。
=ロシアの「拒否権」行使により否決(国連憲章27条3項)。
- 2022年2月27日
平和のための結集決議に基づき、緊急特別総会の招集を要請(安保理決議2623(2022))。
- 賛成11、反対1(ロシア)、棄権3(中国・インド・アラブ首長国連邦)(S/PV.8980, p. 2)。同決議A1末文により、安保理にて9理事国が賛成すれば緊急特別総会が招集される。A1末文には「7」理事国と書かれているが、これは決議採択の1950年当時、手続事項は7理事国の賛成で決定されると定められていたから(当時の国連憲章27条2項。1963年の改正後の現在の27条2項と比較されたい。)。
- 棄権理由
- 総会
- 2022年2月28日 第11緊急特別総会開会
- 2022年2月28日の各国発言(総会プレスリリース)
- 2022年3月2日の各国発言(総会プレスリリース)
- ロシア非難決議採択(A/RES/ES-11/1)(2022年3月2日)
- 武力の行使または武力による威嚇による領域取得を合法と承認してはならない(前文パラ11)
- ロシアの行動は侵略であり、国連憲章2条4項に反するとして非難(deplores in the strongest terms)(パラ2)
- ロシアは即時撤退する義務あり(パラ4)
- DPR/LPRの地位に関するロシアの決定(承認)は国連憲章の諸原則(2条)に反するとして非難(deplores)(パラ5)。当該決定を直ちに撤回する義務(パラ6)。
- 賛成141、反対5(ロシア・ベラルーシ・北朝鮮・エリトリア・シリア)、棄権35(中国・インドなど)により可決(国連憲章18条2項)(総会プレスリリース)。
- ロシアの人権理事会理事国資格を停止(2022年4月7日)(決議案A/ES-11/L.4 4月8日現在、決議文はアップロードされていません)
- 理由 ロシアがgross and systematic violations of human rightsを行ったため(上記決議(案)前文第4段)
- 根拠規定 人権理事会設立決議A/RES/60/251のパラ8。
- 人権理事会
- 決議49/1(2022年3月4日)
- ロシアによる侵略を強く非難(前文パラ10)
- ロシアによる侵略から生じている人権侵害と国際人道法違反を可能な限り強い言葉で非難(パラ1)
- ロシアによる侵略との関連で生じている人権侵害と国際人道法違反に関する調査を行うウクライナ独立調査委員会を設置(パラ9)
- 賛成32、反対2(ロシア、エリトリア)、棄権13(アルメニア、ボリビア、カメルーン、中国、キューバ、ガボン、インド、カザフスタン、ナミビア、パキスタン、スーダン、ウズベキスタン、ベネズエラ)。
- ウクライナ独立調査委員会委員任命(2022年3月30日)
- ロシアによる人権理事会「辞任」(2022年4月7日)
- 上記総会決議(決議案A/ES-11/L.4)を受けた決定
「制裁」措置
外交関係法上の問題
投資法上の問題
- ロシアによる撤退企業資産の収用
- 事実関係
- 日ロBIT 5条
- 収用は認められる。ただし、"prompt, adequate and effective compensation"が支払われることが必要(5条1項)。 その額は"the normal market value of the investments and returns"である(5条2項)。
- 「収用」か?
- 上記ロイター記事によれば "put into external administration"
- 財産権が恒久的に剥奪されなくても、その行使が一定期間停止されれば「収用」を構成すると判断した事例
- 発電設備の1年間の差押えが「収用」 Ulysseas v. Ecuador, PCA Case No. 2009-19, Final Award, 12 June 2012, para. 173.
- 剥奪がpermanentでなくとも、more than transitoryであれば「収用」 Servier v. Poland, Award, 14 Febrary 2012, para. 577. (事実関係は黒塗りされており詳細不明。)
- 措置の期間と(投資への)影響次第では恒久的措置でなくとも「収用」 Olin v. Libya, ICC Case No. 20355/MCP, Final Award, 25 May 2018, para. 165.(本件では4年半)
- ポーランドによるポーランド・ロシア投資条約への同意撤回
- 条約 以下の報道から推測するに、両国が署名、ポーランドが批准したものの、ロシアが批准せずに発効していない模様。
- 首相声明(2022年3月29日)(ポーランド語。M本はGoogle翻訳で読みました)
- 報道
- CE Noticias Financieras English, "Poland passes law to stop coal purchases from Russia"(2022年3月29日)Lexisからアクセス可
- Prawo.pl(2022年3月29日)(M本はGoogle翻訳で読みました)
- Tass(2022年3月30日)
WTO法上の問題
国際司法裁判所への提訴
- 管轄権の根拠 ジェノサイド条約9条
- 訴状(2022年2月26日)
- 仮保全措置手続(裁判所規程41条)
- 仮保全措置申請(2022年2月26日)
- ICJ所長による通知(2022年3月1日)(裁判所規則74条4項)
- 仮保全措置命令(2022年3月16日)
- 主文(パラ86)
- ロシアによる軍事活動の即時停止
- ロシアが指揮・支援する部隊が軍事活動をしないことを確保する義務
- ジェノサイド条約との関係
- ジェノサイドの防止・処罰のために軍事活動を行うことはジェノサイド条約1条により認められておらず、ウクライナはそのような軍事活動の対象とならない権利をジェノサイド条約に基づいて有している、というウクライナの主張(パラ31、52)は、一応成り立ち得る(パラ60)。
- ロシアは自らの「特殊軍事行動」は国連憲章51条および慣習法に基づくと主張しているが、ある行為が一つの条約の範囲に収まるとは限らない(パラ46)。
- あくまで暫定的判断であり、管轄権・本案についてはこれから両当事国が主張を提出する(パラ85)。
- 反対2名(賛成は13名)
- Gevorgian判事宣言
- ウクライナの主張を認めると、国家が何らかの行為をとる場合に、ある条約で扱われている事項が当該行為の遂行決定に何らかの役割を果たしていさえすれば、その条約が適用されることになってしまう(パラ8)。
- Xue判事宣言
- ロシアは、ジェノサイド条約1条により武力行使が認められるとは主張していない(パラ3)。
- ロシアによる命令履行の拒否
- 大統領府報道官発言(2022年3月17日)(タス通信):裁判所に管轄権なし
- ICJ規程36条6項
ウクライナのEU加盟申請
ヨーロッパ評議会・ヨーロッパ人権条約からの脱退・除名
スポーツ法上の問題
- 各種スポーツ連盟によるロシアの排除
- ロシア競技者・チーム・連盟によるスポーツ仲裁裁判所(CAS)への仲裁申立と審理状況
/ 2019年のニュース(国際法ニュースはその後休止中)