科目

国際法1（前期）および国際法2（後期）をあわせて現代国際法全般を体系的に学ぶ。

国際法1では、主として国際法の総論的部分と、国家の地位および国家管轄権、さらに人的管轄にかかわる領域を取り扱う。上記分野に関連する国際法規則の内容を把握するとともに、その背景にある考え方を理解することを目指す。

国際法を使いこなすことのできる実務法曹は世界中で求められており、日本でもその必要性は高まる一方である。本講義では、担当教員の日常的な実務経験に基づき、実務で「どのように国際法を使うか」を身につける。そのため、講義においては具体的紛争事例・裁判例を中心に扱う。

１．国際法の基本構造（１）――導入
　国際法の妥当基盤としての国際社会の構造を把握するために、「国家」「主権」概念の歴史的展開についての理解を深める。

２．国際法の基本構造（２）――国際法の主体（１）――
　国家 「国家」が「ある」とはどういうことか。パレスティナは「国家」か。ベネズエラを代表するのはどの政府か。ソ連はどの国がどのように引き継いだのか。「国家承認」「政府承認」「国家承継」として論じられるこれら問題を考える。

３．国際法の基本構造（３）――国際法の主体（２）――
　国家以外 「国」際法というからには「国」のみが法主体であるはずだが、現実には個人や企業などの私人も関連する。どのような条件の下で私人が国際法上の権利を有するのか、国家とそれら私人とはどのような関係に立つのか。「外交的保護」「国際法主体性」について考える。

４．国際法の基本構造（４）――空間（１）―― 国家領域
　国家は領域的存在である。国家が領域を有するとはどういうことか、領域権限取得原因を中心に学ぶ。

５．国際法の基本構造（５）――空間（２）―― 国際化地域
　国際河川や国際運河、極地、さらに宇宙空間と天体に関する制度を学ぶ。

６．国際法規範形成（１）――慣習国際法
　国際法規範形成につき、その基本である慣習国際法の形成・認定過程を理解する。

７．国際法規範形成（２）――条約（１）
　次の８とあわせて条約に関する法を概説する。まず条約の締結手続と留保の制度を取り扱う。

８．国際法規範形成（３）――条約（２）
　つづいて、条約と第三国の関係、条約の無効原因、及び条約の終了原因を学ぶ。

９．国際法規範形成（４）――法の一般原則
　国際法において「法の一般原則」がどのように理解されてきたかの経緯を確認した上で、最近の新たな展開を分析し、そのような新たな展開が見られる背景を理解する。

１０．国際法による国家の権限の規制（１） ――国家管轄権
　国家が自国法を制定・適用・執行することに関して国際法がどのように規律しているかを理解する。

１１．国際法による国家の権限の規制（２）――主権免除
　国内裁判において外国国家が被告となることはない、という国家の裁判権免除（主権免除）の条件・根拠について理解する。

１２．国際法による国家の権限の規制（３）――外交・領事制度
　外交使節及び領事制度の沿革、それらの任務、特権免除を理解する。

１３．国際法における個人（１）――難民
　国際法における個人に関する問題のうち、人権については「国際人権法」で学ぶ。ここでは、難民に関する国際法規範を学び、国家が難民を保護しなければならないのはなぜかを考える。

１４．国際法における個人（２）――国際刑事法
　個人は、国際法上の権利を有するのみならず、規制対象ともなる。各国が刑事管轄権行使にあたってどのように協力し、どのような国際的制度を構築しているか、犯罪人引き渡しおよび国際刑事裁判所について学ぶ。

成績評価は、筆記試験の成績を基礎として、プラスマイナス５点の範囲内で平常点を加味する。 なお、４回以上授業を欠席した場合は単位を認めない。

教科書：酒井啓亘ほか『国際法』（有斐閣、2011年）
教科書刊行後の展開に関する補遺を担当教員ウェブサイト上に掲載するので、教科書と併せて参照すること。

参考書：薬師寺公夫ほか編『判例国際法［第3版］』（東信堂、2019年）、薬師寺公夫ほか編『ベーシック条約集2020年版』（東信堂、2020年）

条約は英文が正文の場合は英文も用いるので、必要に応じて上記条約集の日本語訳を活用されたい。

履修要件：特になし。

授業外学習（予習・復習）等：授業では予習を前提として議論を深めていくので、予習は必須である。また、過度な負担にならないように配慮しつつ、英語資料も一定程度用いる。英語で仕事のできる実務法曹は至る所で求められており、法科大学院在学中にある程度慣れておくことが非常に望ましい。