科目

国際機構やそれに類する組織の活動を、「国際」的あるいは「グローバル」な「行政」として把握する見方は、19世紀にすでに見られ、今日一層有力になりつつある。この講義は、その例となり得る国際機構（やそれに類する組織）の活動の実態を理解した上で、そのような活動を「国際」的あるいは「グローバル」な「行政」として把握することの意義を検討する。

いずれは国際公務員を目指したいと思っている者、外務省等の官庁を目指す者、JICA/JBIC等の国際協力機関を目指す者、国際NGOで活動したい者、およそ一般に「国際」に関心のある者を対象とする。

今年度は、国際的な行政を理論的かつ実践的に理解するために、グローバルな環境問題を素材とする。そのために、欧米の公共政策大学院や法科大学院で用いられている標準的な国際環境法の教科書を用い、そのうち国際行政に関する部分を読みながら考察を深める。当然ながら、講義資料は英語である。英語の文献資料を読解する能力を徹底的に鍛える場でもある。

国際（グローバル）行政の実態を理解する。

グローバル環境を素材に、国際機構や種々のアクターがなす活動を法的観点から把握する能力を身につける。

国際問題を扱う英語文献を日本語文献と大差ない速さ・正確さで読み解けるようになる。

教科書の次の章を基に議論する。受講生は、下の「授業外学習（予習・復習）等」欄に示した予習を行った上で参加する。各回ごとに担当者を決めるのではなく、毎回全員で議論をする。 初回から、十分な予習をした上で参加すること。

1. Chapter 1: The Environment and International Society

2. Chapter 4: International Lawmaking and Regulation

3. Chapter 5: Compliance (International Enforcementまで)

4. Chapter 5: Compliance (International Settlement of Dispute以降）

5. Chapter 6: General Principles and Rules (Cooperationまで)

6. Chapter 6: General Principles and Rules (Sustainable Development以降)

7. Chapter 14: Environmental Impact Assessment

8. Chapter 15: Environmental Information and Technology Transfer

9. Chapter 16: Liability for Environmental Damage (State Liabilityまで)

10. Chapter 16: Liability for Environmental Damage (Civil Liability...以降)

11. Chapter 17: Human Rights and International Humanitarian Law

12. Chapter 18: International Economic Law (Trade and Environmentまで)

13. Chapter 18: International Economic Law (Foreign Investment以降)

14. Chapter 19: Future Developments

平常点(40%)・レポート(20%)・期末試験(40%)

平常点は、講義の場における議論への参加状況により評価する。欠席していればもとより、物理的に出席していても議論に参加しなければ評価の対象にしない。

レポートでは、教科書のChapter7〜Chapter13の分野のいずれかに関連する英語論文1本を要約し、簡潔な評価を加える。対象とする論文の選び方は、講義において指示する。

Philippe Sands & Jacqueline Peel, Principles of International Environmental Law, 4th ed., Cambridge University Press, 2018.

Chapter 2: HistoryおよびChapter 3: Governanceは記述的であり、特に議論すべき問題も含まれていないので、受講生の自習に委ねる。英語を読むのに苦労する者は、参考書に挙げる日本語文献を手がかりにすると良い。

Chapter7〜Chapter13は個別具体的分野に関する説明である。講義では個別分野は扱わないが、レポート課題を選ぶ際に用いる。

• 松井芳郎『国際環境法の基本原則』(東信堂) ISBN:9784798900124
• Pierre-Marie Dupuy & Jorge Viñuales, International Environmental Law, 2nd ed., Cambridge University Press.
• The IMLI Treatise on Global Ocean Governance, vols. 1-3, Oxford, Oxford University Press.
• Charles McManis, Routledge Handbook of Biodiversity and the Law, London, Routledge.
• Alistair Rieu-Clarke, Routledge Handbook of Water Law and Policy, London, Routledge.
• Sherilyn MacGregor, Routledge Handbook of Gender and Environment, London, Routledge.
• Sebastien Duyck, Routledge Handbook of Human Rights and Climate Governance, London, Routledge.
• Robert McLeman, Routledge Handbook of Environmental Displacement and Migration, London, Routledge.
• Susan Breau, Research Handbook on Disasters and International Law, Cheltenham, Elgar.
  （リンクのないものも、間もなく図書館で利用できるようになります。）

参考書は、予復習の際の参考文献としてのほか、レポート課題の論文選びにも活用されたい。

その他参考文献は、上記教科書に示してあるほか、講義中に随時紹介する。

【予習】

教科書の該当部分を熟読し、理解できない箇所があれば自分なりの方法で調べ、それでも理解できなければ講義中に質問する用意をしてくること。

【復習】

復習については特に指示しない。それぞれ自分なりの方法で復習されたい。

講義では、受講生が充実した予習をしてくること前提として、もっぱら議論に時間を費やす。教室には、人の話を聞くためにではなく、議論に参加するために来て頂きたい。