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神戸大学法学部 2008年度前期
1年次演習
演習概要
Deine Zauber binden wieder was die Mode streng geteilt. Alle Menchen werden Brüder wo dein sanfter Flügel weilt. (「あなたの聖なる力は、この世の習わしがはっきりと分け隔てたものを結びつけ直す。すべての人は、あなたの穏やかなる翼の下で、兄弟となる。」Friedrich von Schiller原作、Ludwig van Beethoven改作、「An die Freude(歓喜に)」、Beethoven交響曲第9番第4楽章。M本訳)
「教室はきれいに」という掲示があるのは、その教室がきれいでないからである。「みんなみんな、生きているんだ友達なんだ」と説教されるのは、みんなが友達ではないからである。とはいえ、「人類皆兄弟」とまでは言わないにしても(兄弟だったら仲がいいかどうかはさておき)、せめて近所の人とぐらいは仲良くできないものだろうか。
ところが、世の中の現実はなかなかそうはいかない(「汝の隣人を愛せよ」(マタイ福音書22章39節))。2008年2月、コソヴォは独立を宣言した。セルビアの人たちと一緒に生きていくのはどうしても嫌だ、というのである。3月には、中国からの独立を求める人々がチベットで暴動を起こし、中国政府はそれを実力で抑え込もうとしている。しかも、このような例はコソヴォやチベットに限った話ではない。なぜ、私たちは「みんな仲良く」できないのだろうか(「以和為貴」)。
この演習では、一つの政治集団を形作る「人民people/国民nation」の範囲の決め方についての先人の議論を振り返り、現在、世界各地に存在している分離独立運動について調べ、考える。大量の文献に取り組むこと、そして、世界を相手にするので英語文献もどんどん出てくること、ぜひ楽しみにしておいていただきたい。世界に目を向けたい人、世界から日本を見てみたい人、英語読解力を鍛えたい人、一つのテーマを掘り下げたい人、知的好奇心に満ちあふれている人、みなさん大歓迎である。
第1部 「人民/国民」はどのように生まれたか――読解と討論
第1回 導入――今、コソヴォで、チベットで
第2回 フィヒテ対ルナン――「人民/国民」は戦争の灰から生まれた
第3回 レーニン対ウィルソン――20世紀を決めた2人
第4回 カール・シュミット――あなたは私の友か敵か
第5回 ベネディクト・アンダーソン――すべては私たちの記憶の中に
第6回 ウォーラーステインとバリバール――資本主義の中の人民
第7回 人民の自決権――「自分」が「決める」ということの意味
第2部 現代世界における「人民」の苦闘――調査と報告
第8回 北アイルランド――ベルファストの壁は神が造りたもうた
第9回 バスク――テロは犯罪か抵抗運動か
第10回 チベット――孤立無援の人民
第11回 ケベック――自分で決めることを許されない人民
第12回 ヌーヴェル・カレドニー――21世紀に残る植民地の苦悩
第13回 ベルギー――多文化共生は夢か幻か
第14回 コソヴォ――マトリョーシカは開けられた