4月14日 |
1.外交的保護から投資条約仲裁までの経緯 |
予習課題
- 酒井啓亘ほか『国際法』(有斐閣、2011年)第1編第1章第4節、第5編第1章第3節を読み、外交的保護および国際投資法の基本を確認する。国際投資法については、現時点で細かいところまで理解しようとする必要はない。
- 講義で以下の資料を用いるので、一応目を通してくること。現時点で理解できなくても気にしなくてよい。
- さらに余裕があれば、柳嚇秀(編)『講義国際経済法』(東信堂、2018年)第10章・第11章も読んでくると有益である。
- 初回は、「答案」の作成は求めない。
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4月21日 |
2.投資家――定義と利益否認条項 |
予習課題
以下は、事前に読んでこなくてもよいが、講義で用いるので持参すること。もちろん、可能な範囲で事前に目を通しておくに越したことはない。
- Société Générale v. Dominican Republic, LCIA Case No. UN 7927, Award on Preliminary Objections to Jurisdiction, 29 September 2008.
- 講義で扱う部分 paras. 115-121, Annex 1.
- 関連条約 ドミニカ共和国・フランスBIT 上記UNCTADサイトで探してくる。
- 評釈 井口直樹「投資協定仲裁判断例研究(6)」JCAジャーナル57巻3号(2010年)
- Standard Chartered Bank v. Tanzania, ICSID Case No. ARB/10/12, Award, 2 November 2012.
- 講義で扱う部分 paras. 1-4, 40, 257-265.
- 関連条約 タンザニア・UK BIT 上記UNCTADサイトで探してくる。
今回も「答案」の作成は求めない。 |
4月28日 |
3.保護される投資の範囲 |
予習課題
- Romak v. Uzbekistan, PCA case no. AA280, Award, 26 November 2009.
- 関連条約・文書
- 読むべき箇所 仲裁判断パラ209-232
- 参考 山本晋平「投資協定仲裁判断例研究(14)」JCAジャーナル57巻10号(2010年)
- Abaclat and Others v. Argentina, ICSID Case No. ARB/07/5, Decision on Jurisdiction adnd Admissibility, 4 August 2011.
- 関連条約 アルゼンチン・イタリアBIT
- 読むべき箇所 決定・反対意見は、上記リンク先Materialsタブをクリックすれば見つかる。
- 決定パラ352-387
- (余裕があれば)反対意見パラ62-119
- 参考 鈴木五十三「投資協定仲裁判断例研究(31)」JCAジャーナル59巻8号(2012年)
今回も「答案」の作成は求めない。次回より求めることとする。 |
5月17日 |
4. 公正衡平待遇義務――仲裁判断例の展開 |
予習課題
- 次の各条約における公正衡平待遇義務条項を比較する。
- Metalclad v. Mexico, ICSID Case No. ARB(AF)/97/1, Award, 30 August 2000を読む(リンク先のMaterialsタブをクリック)。
- 参考 繁田泰宏「123 メタルクラッド事件」松井芳郎(編集代表)『判例国際法〔第2版〕』(東信堂、2006年)
- Metalclad事件で議論された公正衡平待遇条項はNAFTA1105条(11章にある)であり、上記2000年の仲裁判断はNAFTA公正貿易委員会による同条の解釈(リンク先文書のB。公正貿易委員会についてはNAFTA2001条を、その解釈の法的効果についてはNAFTA1131条2項を、それぞれ参照)が示される前に出されている。上記判断に示された事実関係を前提にして、仮にこの事件が上記の4つの条約のそれぞれに基づいて申し立てられたものであったとしたならば、仲裁廷は異なる判断に至ったと考えられるかどうか、4つの条約ごとに説明せよ。A4・2枚以内にまとめ、5月16日(木)17時までにM本宛にWordまたはPDFで送信すること。
- 参考文献
- 坂田雅夫「北米自由貿易協定(NAFTA)1105条の『公正にして衡平な待遇』規定をめぐる論争」同志社法学55巻6号(2004年)
- 小寺彰「公正・衡平待遇」小寺彰(編著)『国際投資協定』(三省堂、2010年)
- 坂田雅夫「公正衡平待遇条項の適用実態」日本国際経済法学会年報23号(2014年)
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5月27日(月)
2限 補講 |
5.公正衡平待遇義務――正当な期待の保護 |
予習課題
1. 次の仲裁判断例要旨を読み、内容を理解する。
- 井口直樹「投資協定仲裁判断例研究(79)」JCAジャーナル63巻6号(2016年)
- M本正太郎「投資協定仲裁判断例研究(101)」JCAジャーナル65巻6号(2018年)
2. 上記の判断例に照らして、日本の太陽光発電「固定価格買取制度」における価格の変動を理由に、日・香港BITに基づいて日本による「正当な期待の侵害」があったと主張せよ。A4・2枚以内にまとめ、5月24日(金)17時までにM本宛にWordまたはPDFで送信すること。
参考
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5月31日 |
6.収用――間接収用と規制権限 |
予習課題 この回では、答案の提出は求めない。
1. Saipem v. Bangladesh, ICSID Case No. ARB/05/7, Award, 30 June 2009を読む。
- 根拠条約 バングラデシュ・イタリアBIT(UNCTADサイトで探す)
- 参考 鈴木五十三「投資協定仲裁判断例研究(11)」JCAジャーナル57巻7号(2010年)
- 「間接収用」とはどういう収用か。
- なぜこのような概念が必要なのか。
- 本件において収用されたのは何か。
2. Chemtura v. Canada, Award, 2 August 2010を読む。
- 根拠条約 NAFTA
- 参考 石川知子「投資協定仲裁判断例研究(23)」JCAジャーナル58巻4号(2011年)
- "police powers"理論とはどのようなものか。
- その法的な根拠はどこにあるか。
参考
- 憲法の収用規定(憲法29条3項)につき、憲法の教科書で復習。
- 松本加代「第7章 収用」小寺彰(編著)『国際投資協定』(三省堂、2010年)
- 坂田雅夫「投資保護条約に規定する『収用』の認定基準としての『効果』に関する一考察」同志社法学57巻3号(2005年)
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6月3日(月)
2限 補講 |
7.義務遵守条項――守るべき「義務」の範囲 |
予習課題 この回も答案の提出は求めない。
1. SGS v. Philippines, ICSID Case No. ARB/02/6, Decision of the Tribunal on Objections to Jurisdiction, 29 January 2004を読む。
2. SGS v. Paraguay, ICSID Case No. ARB/07/29, Decision on Jurisdiction, 12 February 2010とを読む。
- 根拠条約 パラグアイ・スイスBIT(UNCTADサイトで探す)
- 参考 猪瀬貴道「投資協定仲裁判断例研究(39)」JCAジャーナル59巻9号(2012年)
問題
- 義務遵守条項の解釈適用に関し、この二つの決定の間の違いはどこにあるか。
- その違いは何に起因するか。
参考
- 坂田雅夫「投資保護条約の傘条項が対象とする国家契約の違反行為――最近の判例・学説に見られる「主権的行為論」の根拠の検討を中心として――」同志社法学58巻2号(2006年)
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6月14日 |
8. 例外――租税例外・安全保障例外・一般例外 |
予習課題
講義では、以下2つの事例における例外規定の役割について確認した上で、事前提出課題について議論する。
1. Hulley v. Russia, PCA Case No. AA 226, Final Award, 18 July 2014.
- 課税措置例外に注意しながら読む。
- 根拠条約 エネルギー憲章条約(参照、5月27日講義)
- 参考 M本正太郎「投資協定仲裁判断例研究(65)」JCAジャーナル62巻3号(2015年)
2. Continental Casualty v. Argentina, ICSID Case No. ARB/03/9, Award, 5 September 2008.
- 根拠条約 米・アルゼンチンBIT(UNCTADサイトで検索)
- 参考 荒木一郎「投資協定仲裁判断例研究(3)」JCAジャーナル56巻12号(2009年)
- さらに参考
提出課題(6月13日(木)17時までに提出。A4・2枚以内)
TPP(CPTPP)29章の例外規定は、そこに示されている範囲で9章(投資)の諸規定にも適用される。投資関連規定に適用される例外規定を抜き出し、それらが規定されているのとされていないのとでどのような差が実際に生じるか、説明せよ。
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6月21日 |
9. 汚職・腐敗と投資保護 |
予習課題(この回は提出を求めない)
1. Plama v. Bulgaria, ICSID Case No. ARB/03/24, Award, 27 August 2008.(汚職・腐敗の例ではないが、投資家側に非がある事例として扱う。)
- 参考 奥田安弘「投資協定仲裁判断例研究(2)」JCAジャーナル56巻11号(2009年)
- 根拠条約 エネルギー憲章条約
- 主文(パラ325)パラ3("Claimant is not entitled...")の法的根拠を説明せよ。
2. Metal-Tech v. Uzbekistan, ICSID Case No. ARB/10/3, Award, 4 October 2013.
- 参考 菊間梓「投資協定仲裁判断例研究(59)」JCAジャーナル61巻8号(2014年)
- 根拠条約 イスラエル・ウズベキスタンBIT(UNCTADサイトで検索)
- 本件において仲裁廷が管轄を否定した法的根拠を説明せよ。
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6月24日(月)
2限(補講) |
10. 仲裁申立とその濫用 |
予習課題
1. Phoenix v. Czech Republic, ICSID Case No. ARB/05/6, Award, 15 April 2009.
- 参考 猪瀬貴道「投資条約仲裁手続における請求主体の権利濫用による制約」日本国際経済法学会年報21号(2012年)
- 根拠条約 チェコ・イスラエルBIT(UNCTADサイトで検索)
2. Mobil v. Venezuela, ICSID Case No. ARB/07/27, Decision on Jurisdiction, 10 June 2010.(当時の事件名と現在のそれとが異なることに注意)
- 参考 早川吉尚「投資協定仲裁判断例研究(20)」JCAジャーナル58巻1号(2011年)
- 根拠条約 オランダ・ベネズエラBIT(UNCTADサイトで検索)
提出課題(6月21日(金)17時までに提出。A4・2枚以内)
投資条約による保護を得ることを目的の少なくとも一つとして企業構造を変更する場合、どのようなときには条約の保護が得られ、どのような場合には得られないか。また、保護が得られない場合、その法的根拠はどのようなものか。 |
6月28日 |
11. 仲裁人の選任と忌避 |
予習課題(この回は提出を求めない)
1. CC/Devas v. India, PCA Case No 2013-09, Decision on the Respondent's Challenges to the Hon. Marc Lalonde as Presiding Arbitrator and Prof. Francisco Orrego Vicuña as Co-Arbitrator, 30 September 2013.
- 根拠規則 UNCITRAL仲裁規則(1976年版)
- 参考 小原淳見「投資協定仲裁判断例研究(64)」JCAジャーナル62巻2号(2015年)
- 2人の仲裁人につき、判断が割れたのはなぜか。また、それぞれの判断は妥当か。
2. ICSID仲裁規則改正
- ICSID条約が適用される場合、仲裁人の失格申立は同条約56条ないし58条により規律される。このうち、58条については特に批判が強い。
- ICSIDでは、現在、仲裁規則など各種規則の改正作業が進んでいる(参照、ICSID条約6条1項(a), (b), (c))。現在のICSID仲裁規則(2006年版)では、失格についてはRule 9が定めているが、これを全面的に改める提案が出されている。
- 第一次提案(2018年) Rule 30(PDFの160-163頁)
- 第二次提案(2019年) Rule 22(PDFの144-146頁)
- これらの提案によれば、何がどのように変わることが提案されているか。また、それに賛成か反対か、あるいは他のより良い案があるか、考えてくる。
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7月5日 |
12. 仲裁判断の取消し |
予習課題
1. Sempra v. Argentina, ICSID Case No. ARB/02/16, Decision on the Argentine Republic's Application for Annulment of the Award, 29 June 2010.
- 参考
- M本正太郎「投資協定仲裁判断例研究(15)」JCAジャーナル57巻10号(2010年)
- M本正太郎 「投資協定仲裁の公的性質とICSID仲裁判断取消制度の新展開」法学論叢170巻4・5・6号(2012年)
2. Russian Federation v. Veteran Petroleum Ltd.; Russian Federation v. Yukos Universal Ltd., Russian Federation v. Hulley Enterprises Ltd, Rechtbank Den Haag (The Hague District Court), 20 April 2016, ECLI:NL:RBDHA:2016:4230.
- 参考
- 早川吉尚「投資協定仲裁判断例研究(81)」JCAジャーナル63巻8号(2016年)
- 森下哲朗「第8章 仲裁判断の取消し」谷口安平・鈴木五十三(編)『国際商事仲裁の法と実務』(丸善雄松堂、2016年)
事前提出課題(7月4日(木)17時までに提出。A4・2枚以内)
- ICSID条約に基づく仲裁判断と、それ以外の仲裁判断との場合で、取消手続にどのような差異があるか。
- 仲裁申立の際にICSID条約に基づく仲裁とそれ以外との仲裁とのいずれかを選択できる場合、申立を行う投資家としては、仲裁判断の取消しに関する限り、そのいずれを選択した方が有利であるか。
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7月12日 |
13. 仲裁判断の執行 |
予習課題
事前提出課題(7月11日(木)17時までに提出。A4・2枚以内)
以下の各条文を読み、申立を行う投資家の観点から見た場合、ICSID仲裁と非ICSID仲裁とでどちらがどの程度有利であるかを考える。
参考
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7月19日 |
14. 投資条約仲裁改革と常設裁判所構想 |
予習課題(事前提出は求めない)
- CETA 8.23条〜8.29条を読む。
- この諸規定と、これまでに見てきた投資条約の紛争処理条項との異同を整理する。
- CETAにおける投資紛争処理手続の得失を整理する。
参考
- Natacha Cingotti et al., Investment Court System put to the test, Canadian Centre for Policy Alternatives, April 2016.
- M本正太郎「常設投資裁判所構想について――ヨーロッパ連合による提案を中心に――(その1〜その7・完)」JCAジャーナル64巻(2017年)8号〜12号、65巻(2018年)1号・2号。
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