科目

国際機構やそれに類する組織の活動を、「国際」的あるいは「グローバル」な「行政」として把握する見方は、19世紀にすでに見られ、今日一層有力になりつつある。この講義は、その例となり得る国際機構（やそれに類する組織）の活動の実態を理解した上で、そのような活動を「国際」的あるいは「グローバル」な「行政」として把握することの意義を検討する。

いずれは国際公務員を目指したいと思っている者、外務省等の官庁を目指す者、JICA/JBIC等の国際協力機関を目指す者、国際NGOで活動したい者、およそ一般に「国際」に関心のある者を対象とする。

今年度は、国際的な制度がその存在自体を問われる事態が生じているとき、どのように対応すべきかを考える。何が問題であるかを明らかにし、制度をどのように改善するか、あるいは放棄するか、放棄するならば代わりに何をすべきなのか、法政策論的に検討する。「国際」あるいは「グローバル」問題を扱うので、当然ながら、講義資料の多くは英語である。英語の文献資料を読解する能力を徹底的に鍛える場でもある。

国際機構や種々のアクターがなす活動を法政策的観点から把握する能力を身につける。

国際問題を扱う英語文献を日本語文献と大差ない速さ・正確さで読み解けるようになる。

第1部　国際刑事裁判所(ICC)
　1. ICC設立の経緯
　2. 「アフリカ支配のための新植民地主義の手先」か
　3．「雑魚ばかり」扱う裁判所か、大物を扱えばそれでいいのか
　4. 「地球滅びるとも正義はなされよ」？
　5. 第三国に対しては沈黙しなければならないのか

第2部　世界貿易機関(WTO)紛争処理機関(DSB)
　1. WTO-DSB設立の経緯
　2. 米国は何に不満なのか。その不満は正当なものか
　3. 崩壊を座して待つのか、どのような対応があり得るか
　4. FTAは（どこまで）WTOを代替し得るか

第3部　投資条約仲裁
　1. 投資条約仲裁興隆の経緯
　2. 投資条約仲裁は環境に有害か
　3. 投資条約仲裁は人権を侵害するか
　4. 投資条約仲裁は投資家側に一方的に有利なしくみか
　5. 投資条約仲裁はエリート支配を固定するか

第4部　まとめ

平常点(40%)・レポート(20%)・期末試験(40%)

平常点は、講義の場における議論への参加状況により評価する。欠席していればもとより、物理的に出席していても議論に参加しなければ評価の対象にしない。

レポートでは、講義で扱う分野のいずれかに関連する英語論文1本を要約し、簡潔な評価を加える。対象とする論文の選び方は、講義において指示する。

使用しない。

毎回、予習課題として資料・文献を示す。その少なからぬ部分は英語であり、英語文献読解の力をつける機会としても活用されたい。

• Mark Klamberg, Commentary on the Law of the International Criminal Court, Torkel Opsahl Academic EPublisher.
• Philipp Kastner, International Criminal Law in Context, Routledge.
• Line Engbo Gissel, The International Criminal Court and Peace Processes in Africa, Routledge.
• Gideon Boas, International Criminal Justice, Elgar.
• Simon Nicholas Lester, World Trade Law, 3rd ed., Hart Publishing.
• Mavluda Sattorova, The Impact of Investment Treaty Law on Host States, Hart Publishing.
• Fola Adeleke, International Investment Law and Policy in Africa, Routledge.
• Valentina Vadi, Proportionality, Reasonableness and Standards of Review in International Investment Law and Arbitration, Elgar.
• Crina Baltag, ICSID Convention after 50 Years, Kluwer Law International.
• Manjao Chi, Integrating Sustainable Development in International Investment Law, Routledge.
• Andrew D. Mitchell, Non-Discrimination and the Role of Regulatory Purpose in International Trade and Investment Law, Elgar.
• Andrew D. Mitchell, Regulatory Autonomy in International Economic Law, Elgar.

参考書は、予復習の際の参考文献としてのほか、レポート課題の論文選びにも活用されたい。なお、4月時点で図書館で利用できないものもあるが、近日中に利用できるようになる。

その他参考文献は、上記教科書に示してあるほか、講義中に随時紹介する。

【予習】

教科書の該当部分を熟読し、理解できない箇所があれば自分なりの方法で調べ、それでも理解できなければ講義中に質問する用意をしてくること。

【復習】

復習については特に指示しない。それぞれ自分なりの方法で復習されたい。

講義では、受講生が充実した予習をしてくること前提として、もっぱら議論に時間を費やす。教室には、人の話を聞くためにではなく、議論に参加するために来て頂きたい。