2016年度後期 演習(国際機構法)

ゼミの概要

KULASISに掲載されているものと同内容です。

ゼミの記録

科目

国際機構法
担当教員 M本正太郎
曜日
演習題目 国際法の使い方――南シナ海問題を素材に――
演習の概要・目的

南シナ海における中国の活動が注目を集めている。フィリピンは中国に対し仲裁を申し立て、中国はどのような仲裁判断が出ようとも従わないと明言している。米は中国の行為は海洋法上正当化されないと批判し、日本は「法の支配」に基づく行動を中国に繰り返し求めている。このように、南シナ海問題は、政治的に重要な問題であると共に、高度に法的な問題でもあり、「法をめぐる政治」が展開されている事例とも言える。加えて、中国がこの問題に関して何かと「歴史的権利」を主張するように、歴史とも切り離して論じられない問題でもある。

ゼミでは、この事例を素材に、現実政治において国際法がどのように使われるかを検討する。

到達目標
  • 実例の分析を通じて、国際法・国際機構法の運用能力を身につける。
  • 専門的内容のリサーチを網羅的に行うことができるようになる。
  • 学術論文を作成するための基礎を身につける。
計画と内容

南シナ海問題について、いくつかのテーマを決めて、グループで論文を執筆する。テーマは参加者の希望を考慮して議論の上決定するが、たとえば以下のようなものが考えられる。

  • フィリピン・中国仲裁判断の分析
     いわゆる「判例研究」であり、間もなく発表されると言われている(ゼミ開始までには確実に発表されているはずの)仲裁判断を読んで法的に分析検討し、評釈する。
  • フィリピン・中国仲裁に対する中国の態度の評価
     中国が当初から仲裁手続への参加を拒否しており、その意味で国際法を無視し続けていることについて、その背景や中国による正当化を調べ、検討する。
  • 中国による「歴史」の主張の検討
     中国は、南シナ海において「歴史」に基づく権利を主張しており、その限りにおいて一般的な国際法の適用を排除しようとしている。この海域においてどのような「歴史」があり、それが現代においてどのような法的意味を持つのかを考える
  • 他の訴訟・仲裁不出廷例との比較
     中国は、国際訴訟・仲裁への不出廷の例は他にもあり、中国だけが特殊な例ではないとも述べている。たしかに、国際司法裁判所ニカラグア事件における米国の不出廷(正確には、途中からの欠席)は有名であり、最近でも、国際海洋法裁判所(暫定措置)Arctic Sunrise号事件におけるロシアの不出廷が知られている。国際法の無視とも言える米・ロの態度はどのように説明されるのか、これら事件における米・ロの態度とフィリピン・中国仲裁における中国の態度との間に違いはあるのか。
履修要件

国際法第一部・第二部とも履修済みであることが望ましく、少なくとも国際法第一部をゼミと並行して履修することを強く勧めるが、意欲と覚悟があればいずれも要件とはしない。

合否判定方法 平常点および論文
授業外学習(予習・復習)

ゼミ開始までにしておいていただきたい最低限の準備について、期末試験終了後にこのウェブサイトに掲載する。

その他

教科書・参考書は使用しない。

使用文献の多くは英語である。英語読解力を鍛える場としても活用されたい。

質問があれば、M本まで。