2015年度後期 国際機構法

概要

 

講義の概要・目的

 プロセスとしてのinternational organization(国際社会の組織化)と被造物としてのinternational organization(国際機構)との法的意義を検討することを通じて、国際関係を法的に把握する力を養成する。

 国際機構法は、現在の国際社会を法的に見るための重要な視点を提供してくれる。加えて、国内法とは異なる観点から眺めることにより、「法」について考えを深める手がかりともなる。

  本講義では、「読めばわかる」「調べればわかる」ことは予習に委ね、教室では読んでも調べてもわからないことについて議論を重ねる。教員の話をじっと聞いて頭にたたき込むのではなく、講義外で得られる情報は自力で得てきた上で、それを基に討論を重ねて理解を深める、学生参加型の講義である。

  昨年度より開講学年が変更され、3回生以上が履修できるようになっていることに留意されたい。

到達目標

主権国家という独立した構成員からなる全体集合(国際社会)において、どのようにして・どの程度組織化された秩序を構成しているのか、法的な観点から理解する(プロセスとしてのinternational organization)。

国連・ILO・WTO・EU・ASEANなどの国際機構の構成および活動について、法的な観点から説明できるようになる(被造物としてのinternational organization)。

調べて得られる情報を基に自らの意見を構築し、講義における議論への参加を通じて、自らの意見を効果的に伝達する方法を身につける。

講義計画と内容

詳細なシラバスは9月にこのウェブサイト上に公開する。以下は概要である。

第1部 国際機構法前史

  1. 「主権」概念以前と以後
  2. 機構の初期形態――会議・国際河川委員会・国際行政連合・国際連盟
  3. 枢軸国の国際法秩序構想――「広域」「大東亜共栄圏」
  4. United Nationsの国際秩序構想

第2部 国際機構の具体的活動分野

  1. 平和と安全
  2. 人権
  3. 経済
  4. 開発
  5. 環境
  6. 刑事
  7. 統治

第3部 国際機構法総論

  1. 成立
  2. 参加
  3. 内部構造
  4. 意思決定制度
  5. 権限(1)――基礎
  6. 権限(2)――規範定立
  7. 権限(3)――規範内容実現
  8. 権限(4)――限界
  9. 責任(1)――国際機構の責任
  10. 責任(2)――国際機構に関する責任
  11. 紛争処理(1)――行政裁判所
  12. 紛争処理(2)――国際裁判所
  13. 紛争処理(3)――国内裁判所
  14. 消滅と承継
  15. 国際機構とそうでないものとの境界

第4部 地域統合

  1. EU
  2. ASEAN
履修要件
受講生は、「国際法第一部」および「国際法第二部」を履修済みであるかあるいは並行して履修している、と想定して講義する。昨年度は、「国際機構法」が3・4回生配当になって1年目であったので「国際法第一部」の履修のみを想定していたが、今年度からは、「国際法第二部」も履修済みである学生を念頭に置いて講義を行う。もちろん、これら科目の単位を取っていなければ「国際機構法」を履修できないという趣旨ではない。
成績評価の方法・基準
期末試験
教科書

特に指定しない。毎回の講義時に、予習のための資料を配付ないしそのダウンロードを指示する。詳細は、9月に掲載するシラバスを参照。

教室での講義は予習課題を踏まえた議論であるため、十分な予習は必須である。

「国際」機構法であるため、本講義で用いられる資料の大半は英語である。英語力を鍛える機会としても活用されたい。

参考書等
9月に掲載するシラバスを参照。
その他

教室には、教員の話や他の学生の発言を聞くためにではなく、教室全体での議論に参加するために来ていただきたい。個人的な事情により議論に参加することはできないが、それでも講義に出席したい、という学生は、事前に連絡すること。

初回講義の予習課題は、9月に担当教員のウェブサイトに掲載する。過去の講義についても掲載しているので、参照しておいていただきたい。