2014年度前期 法科大学院・国際法特講 公共政策大学院 国際法(人と活動)
講義の概要
前期・2単位
講義の概要・目的 | ||
〔法科大学院生へ〕 欧米の大規模法律事務所を見ると、国際法を業務内容としているところが少なくない。また、国連等様々な国際機構においても、法曹資格を有する人々が国際公務員として働いている。しかし、残念ながら、この分野において日本の法曹の進出は十分というにほど遠い状況にある。つまり、この分野における弁護士の仕事は山ほどあるにもかかわらず、日本の弁護士はみすみす仕事を逃している。 日弁連は、『自由と正義』誌において「国際司法裁判所の実像」(2013年12月)、「ハーグ条約実施法の施行に向けて」(2013年11月)、「国際法の理論と実務」(2009年2月号および2010年5月号)や「国際機関で働くということ」(2009年3月号)と題する特集を組み、さらに、2010年から年に1回「国際分野のスペシャリストを目指す法律家のためのセミナー」を法務省・外務省と共催し(後援:国際法学会・法科大学院協会)、さらに、日弁連サイト上に「国際機関就職支援」というページを設けている。これは、国際法分野において活躍する日本の実務法曹が今求められているという認識を、政府・学界のみならず実務界も共有していることを示す。そして、例年このセミナー(8月開催)には全国各地から多くの法科大学院学生が参加し、国際舞台での実務活動に関心を持つ学生が少なくないことも明らかになっている。 本講義では、国際法を用いる法曹実務とはどのようなものかを体感するために、教員自身の実務活動も基礎にしつつ、仮想あるいは現実の問題を素材として、国際法を用いた問題解決を実践的に試みる。【授業内容】に記す各分野につき、当該分野の全体を把握した上で、事例研究に取り組む。 当然ながら、国際法に関する法的問題といえども、国際法にのみ関するものはほぼ皆無と言って良い。これまでに身につけた国内法各分野についての理解を総動員して取り組むことになる。 また、実務活動において「書く」能力は基礎中の基礎である。この講義では、「書く」練習を重ねることにより、その基礎的能力を涵養するとともに、国際法全体の理解を固め・深めることもねらいとする。 〔公共政策大学院生へ〕 この講義では、国際法を「使う」ことを学ぶ。教科書に書かれている国際法を現場でどのように使うのか、そのためには何を知っておかねばならず、どのようなことに留意する必要があるのか、を体感する。 法科大学院と共通の講義であるため、基本的には訴訟の場を想定している。公共政策の学生としては、自分が企業の担当社員だったらどのように行動するか、国側の担当官庁の公務員だったらどうするかを考えるのも有益だろう。国内でしか活動しない企業に勤めても、外務省や経産省でない官庁に勤めても(地方公共団体でも!)、国際法に関する問題はいつでも生じ得る。その際、あなたはどのように対応すべきだろうか。 |
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講義計画と内容 |
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それぞれ、教科書該当範囲の丁寧な予習を前提に当該分野における代表的事例の検討を行う回(「基礎」)と、簡潔な書面を作成する回とを設ける。毎回、仮想あるいは現実の事例を基に議論を行う。 1.経済 通商(WTO/FTA) 2.経済 投資 その1 3.経済 投資 その2 4.人権 自由権 5.人権 社会権 6.出入国管理・難民 7.国際犯罪 |
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履修要件 | ||
〔法科大学院生へ〕 国際法1・国際法2を既に履修していることを前提に講義する(形式的な履修要件ではない)。 〔公共政策大学院生へ〕 受講生は「国際法」を履修済である(もしくは同程度の理解を有している)との前提で講義を行う。 |
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成績評価の方法・基準 | ||
筆記試験および平常点による。 | ||
教科書・参考書 | ||
【教科書】酒井啓亘ほか『国際法』(有斐閣、2011年) 【参考書】松井芳郎(編集代表)『判例国際法[第2版]』(東信堂、2006年) その他、必要な資料(英語を含む)を配付またはダウンロードを指示する。 |
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その他 | ||
〔法科大学院生・公共政策大学院生へ〕 「国際」法なので、必然的に英語による資料も少なからず利用することになる。国際舞台で活躍するために必要な英語力を涵養する場としても活用されたい。もちろん、それぞれの英語力に応じた範囲で対応すれば十分である。当然ながら一定の予復習が求められるが、他の講義と両立する範囲で間に合うように配慮する。 〔公共政策大学院学生へ〕 この講義は法科大学院の学年暦に従って開講される。公共政策大学院の学年暦とは多少のずれがあり得ることに留意されたい。 |