2013年度後期 国際機構法

概要

講義の記録は→こちら

講義の概要・目的
 プロセスとしてのinternational organization(国際社会の組織化)と被造物としてのinternational organization(国際機構)との法的意義を検討することを通じて、国際関係を法的に把握する力を養成する。

 国際機構法は、現在の国際社会を法的に見るための重要な視点を提供してくれる。国際関係に関心のある者、国内法とは異なる観点から眺めることにより「法」について考えを深める手がかりともなる。

 本講義では、「読めばわかる」ことは予習に委ね、教室では読んでもわからないことについて議論を重ねる。教員の話をじっと聞いて頭にたたき込むのではなく、講義までに得てきた情報を基に討論を重ねて理解を深める、学生参加型の講義である。 

講義計画と内容

詳細なシラバスは9月に本ウェブサイト上に公開する。以下は概要である。

第1部 秩序構想――プロセスとしてのinternational organization
  第1節 「主権国家体制」の歴史的相対性
  1.ヨーロッパ 「国家」「主権」が生まれる前と後
  2.東アジア 朝貢冊封「システム」
  3.中東・北アフリカ イスラーム社会

  第2節 主権国家体制の確立と伝播
 1.大国共存の秩序
 2.東アジアにおける展開 「万国公法」の時代

 第3節 国際社会の組織化
 1.国際機構法前史
 2.主権概念の動揺 “The Great War”の衝撃と国際連盟の創設
 3.連盟体制の崩壊
 4.枢軸国の国際秩序構想――主権概念の止揚?
 5.United Nationsの国際秩序構想(1)――経済
 6.United Nationsの国際秩序構想(2)――安全保障

第2部 機構構造――被造物としてのinternational organizations
 第1節 国際機構法の誕生と展開
 1.国際機構の存在 国連損害賠償事件
 2.国際機構の権限 国連経費事件
 3.国際機構の意思決定 表決制度
 4.国際機構の法定立権限
 5.国際機構の責任
 6.国際機構に関する紛争の処理
 7.国際機構を構成する「人」
 8.国際機構が享有する免除
 9.国際機構の消滅と承継

 第2節 やや異質な構造例
  1.超国家的機構 EU
  2.条約に基づかない国際機構 (かつての)ASEAN, OSCEなど
  3.条約に基づくが、国際機構ではない事務局? (かつての)GATT事務局、ラムサール条約事務局、太平洋諸島フォーラム事務局、APEC事務局など
  4.条約に基づくが、国際機構ではない国際公企業?


第3部 ふたたび秩序構想――inter-“national” organizationの限界
  1.国家の壁を破る?国際機構
  2.私的に形成される公秩序 ドーピング規制を例に
  3.Global と international

履修要件
特になし
成績評価の方法・基準
期末試験
教科書

特に指定しない。毎回の講義時に、予習のための資料を配付ないしそのダウンロードを指示する。詳細は、9月に下記サイトに掲載するシラバスに掲載する。

「国際」機構法であるため、本講義で用いられる資料の大半は英語である。英語力を鍛える機会としても活用されたい。

参考書等
  • 藤田久一『国連法』(東京大学出版会、1998年)
  • 佐藤哲夫『国際組織法』(有斐閣、2005年)
  • 最上敏樹『国際機構論』(東京大学出版会、第2版、2006年)
  • 松井芳郎(編集代表)『判例国際法』(東信堂、第2版、2006年)
  • 酒井啓亘ほか『国際法』(有斐閣、2011年)
その他

オフィスアワーは開講時に指定する。

「読めばわかる」ことは予習に委ねるため、相当量の予習をこなしてくることが出席の前提である。また、教室には、教員の話や他の学生の発言を聞くためにではなく、教室全体での議論に参加するために来ていただきたい。個人的な事情により議論に参加することはできないが、それでも講義に出席したい、という学生は、事前にM本に連絡すること。

初回講義の予習課題は、9月にこのウェブサイトに公表する。過去の講義の記録も掲載しているので、参照しておいていただきたい。