2012年度後期 国際機構法

概要

以下は、『便覧』に掲載されるものと同一である。

「講義計画と内容」の詳細については、9月に本サイトに公表するシラバスを参照されたい。

講義の概要・目的
 プロセスとしてのinternational organization(国際社会の組織化)と被造物としてのinternational organization(国際機構)との法的意義を検討することを通じて、国際関係を法的に把握する力を養成する。

 国際機構法は、現在の国際社会を法的に見るための重要な視点を提供してくれる。国際関係に関心のある者、国内法とは異なる観点から眺めることにより「法」について考えを深めたいと思う者の参加を歓迎する。

 本講義では、「読めばわかる」ことは予習に委ね、教室では読んでもわからないことについて議論を重ねる。学生参加型の講義であることに留意されたい。 

講義計画と内容
詳細なシラバスは9月に本ウェブサイト上に公開する。以下は概要である。

第1部 秩序構想――プロセスとしてのinternational organization
  1.聖と俗のピラミッド――キリスト教世界としてのヨーロッパ
  2.「王は王国の中の皇帝」――主権概念の誕生
  3.天子による徳治――中華世界における朝貢冊封「システム」
  4.イスラームの家と戦争の家――イスラーム世界
  5.大国共存の秩序――勢力均衡・会議体制・植民地支配
  6.「ヨーロッパ公法」から「万国公法」へ――中華秩序の変遷
  7.文明開化と国際法――日本はどのように国際法を活用したか
  8.主権概念の動揺(1)――第一次大戦の衝撃と国際連盟・不戦条約
  9.主権概念の動揺(2)――多国間化する経済問題
  10.主権概念の止揚?(1)――遅れてきた帝国日本 植民地支配
  11.主権概念の止揚?(2)――「広域」と大東亜共栄圏構想
  12.連盟体制の崩壊――満州・エティオピア
  13.United Nationsの経済秩序構造――Bretton Woods
  14.United Nationsの安全保障秩序構造――安保理への権限集中

第2部 機構構造――被造物としてのinternational organizations
  15.構造例1 一部権限集中型 国連
  16.構造例2 超国家型 EU
  17.構造例3 分散型 ASEAN
  18.構造例4 国際機構「みたいなもの」 国際公企業・国際会議・国際事務局
  19.法人格 国際機構を「国際機構」として把握する意義
  20.意思決定過程 様々な表決制度の意義
  21.権限総論(1) 有効性の推定
  22.権限総論(2) 構成国による抵抗
  23.法定立権限 国際機構は「立法者」か
  24.条約締結権限 国際機構はどのような場合に条約締結権限を有するか
  25.責任 国際機構の行為の責任を負うのは機構か構成国か
  26.国際公務員 国際機構で働く人に適用される法はどこの法か
  27.消滅 国際機構の破産・清算はどのようになされるか

第3部 ふたたび秩序構想――inter-“national” organizationの限界
  28.NGO 国際法秩序におけるその役割
  29.私的に形成される公秩序 ドーピング規制を例に
  30.国際社会における「憲法」を語ることは可能か?
履修要件
 特になし
成績評価の方法・基準
 期末試験
教科書
 特に指定しない。毎回の講義時に、予習のための資料を配付する。「国際」機構法であるため、本講義で用いられる資料の大半は英語である。
参考書等
  • 藤田久一『国連法』(東京大学出版会、1998年)
  • 佐藤哲夫『国際組織法』(有斐閣、2005年)
  • 最上敏樹『国際機構論』(東京大学出版会、第2版、2006年)
  • 松井芳郎(編集代表)『判例国際法』(東信堂、第2版、2006年)
  • 酒井啓亘ほか『国際法』(有斐閣、2011年)
その他

 オフィスアワーは開講時に指定する。

 「読めばわかる」ことは予習に委ねるため、相当量の予習をこなしてくることが出席の前提である。また、教室には、教員の話や他の学生の発言を聞くためにではなく、教室全体での議論に参加するために来ていただきたい。個人的な事情により議論に参加することはできないが、それでも講義に出席したい、という学生は、事前にM本に連絡すること。

 初回講義の予習課題は、9月にこのウェブサイトに公表する。過去の講義の記録も掲載しているので、参照しておいていただきたい。